潜水服は蛾の夢を見る

主に映画の感想を語るブログです

仮面ライダーオーズ 10th 復活のコアメダル

*公開日前の作品のレビューになります。感想はネタバレなしとありに分けていますが、一切の情報を入れたくない方は読まないことをお勧めします。

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制作国:日本(2022)

日本公開日:2022年3月12日

上映時間:58分

監督:田崎竜太

脚本:毛利亘宏

出演:渡部秀三浦涼介 他

あらすじ:欲望から生まれた怪人グリードと戦い、人々の未来を守った仮面ライダーオーズこと火野映司が、相棒のアンクを復活させるべく旅に出てから10年の月日が流れた西暦2021年。古代オーズが800年の眠りからよみがえり、グリードのウヴァ、カザリ、メズール、ガメルを復活させた。世界が混沌と恐怖に包まれるなか、旅に出ていた火野映司が帰還する。しかし、古代オーズの力はすさまじく、人類は劣勢に立たされる。そんな折、「割れたコアメタル」に異変が起き、アンクが復活するが……。(映画.comより 一部改変)

 

評価:★☆☆☆☆

 

◆感想(ネタバレなし)

運良く舞台挨拶付き完成披露上映会を観ることができました。

 

仮面ライダーオーズ』は非常に好きなドラマの一つです。それだけに10周年記念の続編が出来ると聞いたときには大変嬉しかったのですが、今作のクレジットにドラマシリーズのときのメインライターだった小林靖子の名前が無いことで一気に不安が増してしまいました。今作の脚本を手掛けるのは毛利亘宏。この方も一応サブライターとしてテレビ放送時の『オーズ』に関わっていたわけですが、小林靖子とは力量にだいぶ差があると個人的には感じていました。というのも『オーズ』の中では小林靖子が手掛けた回と毛利亘宏の回では、クレジットを見なくてもわかってしまうぐらい人物の描き方が違ったからです。もちろんあれから10年の月日が流れ、毛利亘宏だって脚本家として成長しているとは思うものの、『オーズ』の創造主である小林靖子ほどには上手くキャラクターを動かせないのではないかと思っていました。


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また、私だけでなく多くのファンのジレンマだと思うのですが、新作が観られるのが嬉しい反面、小林靖子が最後に『オーズ』を書いた『仮面ライダー×仮面ライダー フォーゼ&オーズ MOVIE大戦 MEGA MAX』が非常に『オーズ』の物語として綺麗な着地を迎えた後に、果たして続編が必要なのかという問題があるわけです。既に『仮面ライダー平成ジェネレーションズFINAL』という必ずしも万人に受けたわけではない前例があっただけになおさら不安でした。このあたりのファンの気持ちは例によって結騎了さんのブログに、大変おもしろい記事があるのでそちらを参照して頂けると良いと思います。

www.jigowatt121.com

 

そしてまあ、★の数を見ていただければ御察しのとおりなのですが、その不安は割と的中してしまいます。オーズファンの方々は覚悟して劇場に行かれることをお勧めします。

*以下ネタバレです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆ネタバレ

復活したアンクは映司と再会するが、映司は比奈たちに会うようにだけ言ってその場を去ってしまう。アンクは比奈と再会するが、そこで映司が古代オーズとの戦いで重症を負った後に行方不明になっていることを知る。アンクの案内で比奈、後藤、伊達は映司と再会を果たすが、その映司の正体は鴻上ファンデーションが生み出した人造グリード、ゴーダだった。映司自身は瀕死の状態であり、ゴーダがとりついていることでかろうじて生きている状態だった。ゴーダはアンクに共闘して古代オーズを倒すことを提案する。映司の命をコーダが握っているため、アンクたちは彼に協力するしかなかった。コーダは復活させた4人のグリードのコアメダルを奪い、その力を増大させアンクとゴーダに挑む。アンクはわざとオーズに取り込まれ、内側から紫のコアメダルを奪取し、ゴーダに渡す。コーダはその力でオーズを倒すが、古代オーズから発生したメダルをすべて取り込んで自身の肉体を手に入れる。放り出された映司の肉体にとりついたアンクはタジャドルコンボに変身し、ゴーダを倒す。映司はアンクを自分の身体から追い出すと比奈とアンクのまえで息を引き取る。

 

◆感想(ネタバレあり)

映司の死を描くことは別にダメではなかったと思うのですが、そこで話がバツっと終わってしまうのはいかがなものかと思います。

 

『オーズ』のストーリーの大事な様子の一つは“欲望こそが立ち止まってしまった人を動かすエネルギーである”というメッセージだと思うんですよね。そういう未来に向けて開かれた可能性を示唆しているところが『オーズ』の良さだったと思うのですが、今作は映司の欲望が成就し、満足して死んでしまうというものすごく閉じた終わり方をします。せめてこの部分が、映司の誰かに向けて手を伸ばしたいという欲望が誰かに引き継がれていく、というところまで描いてくれていたら今作の印象はかなり違ったのではないかと思うのです。

 

他にも、アンクが復活した理由が「映司が願ったから」でいいのかとか、アンクがもう1回映司の中に入れば映司は死なないんじゃないかとか、アンクがあの後タイムスリップして『MOVIE大戦 MEGA MAX』の世界に戻ったと思うと『MOVIE大戦 MEGA MAX』の後味が全然違うものになってしまうとか、いろいろ思うことはあったのですが、一番気になったのが前述のとおり今作の閉じた終わり方でした。

 

ストーリーと関係ないですが、グリードチームはせっかくオリジナルキャストをそろえたのなら、もう少し見せ場が欲しかったです。なんだか皆薄暗いところにいるせいで顔が良く見えなかったですし(それでもウヴァだけが優遇されているのがオーズっぽくはありましたが)。

 

せっかくなので舞台挨拶のことも少し触れたいと思います。映司が死んでしまうという結末は、キャスト陣も脚本を読んで初めて知ったようです。やはり衝撃が大きかったようで、君嶋麻耶さんは“賛否両論あると思う”と仰っていましたし、三浦涼介さんに至っては涙ながらに“最初は受け容れられなかった”と仰っていました。映司を演じた渡部秀も“旅人である映司が旅立ったのは嬉しい”と言いつつ涙をこらえていたので、皆それぞれ思うところはあったのではないかと思います。

 

実は高田里穂さんも泣いていらっしゃったのですが、こちらは映司のことというよりも無事に公開できることの喜びだったり、本当に『オーズ』お話としてはこれが最後になってしまうことの寂しさだったりが混ざり合った涙だったように見受けられました。

 

いずれにしてもキャストの方々には相当思い入れがあるようですね。それだけにやっぱり脚本を小林靖子に書いて欲しかった…というところにどうしても帰結してしまう作品でした。

 

◆まとめ

・今作の閉じた終わり方が、『オーズ』の本来の良さとそぐわない気がする。

・脚本を小林靖子に書いて欲しかった。