潜水服は蛾の夢を見る

主に映画の感想を語るブログです

セックス・エデュケーション

ポスター/スチール写真 A4 パターン 6 セックス・エデュケーション 光沢プリント

制作国:イギリス

日本公開日:2019年1月11日(シーズン1/Netflixにて配信)

監督:ベン・テイラー 他

脚本:ローリー・ナン、ソフィー・グットハート 他

出演:エイサ・バターフィールドジリアン・アンダーソン 他

あらすじ:性に対して奥手にも関わらず、セックス・セラピストの母を持つオーティス・ミルバーンは、セックス経験がない高校生。母親譲りの性的な知識を武器に、高校で「セックス・クリニック」を開く。


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評価:★★★★★

 

◆感想:ネタバレなし

Netflixの今作のタグには「ティーン向け」が付いています。そのうえこのタイトルなので私はもっとお勉強的な作品、悪く言えば説教臭い話なのではないかと思っていたのですが、そんなことは一切ありませんでした。基本的にはコメディで楽しく観られる作品です。出てくる登場人物みんな愛しくなるような良質の青春ドラマでした。

 

今作はもちろん性について描かれるわけですが、それを切り口に「自分が真に求めているものは何かを考える」という内省的なテーマと「他者とのコミュニケーション」という社会的なテーマの二つが描かれているように思います。特に前者はシーズン1、後者はシーズン2で色濃く描かれている印象です。前述の通りNetflixのタグはティーン向けとありますが、いずれのテーマも10代の若者に限らず人生の全般に付いて回る普遍的なことなので。どんな年代の人にとっても刺さる話になっています。今作が非常に多くの指示を集めたのはこうした要因があったのではないかと思います。

 

ビジュアル的な部分では色彩の鮮やかさが特徴的です。これは虹色というカラーがLGBTのシンボルカラーであることと関係しているのではないかと思います。これは文字で説明するのは難しいので是非実際に視聴して感じて欲しい部分です。

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また、引用的な挿入歌が多いのも特徴です。歌詞の内容が場面とリンクしているので挿入歌が流れてきたときには英語字幕を出して視聴することをお勧めします。(私のお気に入りはネタバレになるので詳しくは言えませんが↓の″Make Your Own Kind of Music"という曲の流れる場面です。)


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余談ですが今作でメイヴを演じたエマ・マッキーはこれが役者デビューなのだそうです。私はちょっとエマ・ワトソンに似てるような気がしたのですが、なんと本人がエマ・ワトソンの演じたハーマイオニーのモノマネをしている動画がありました(↓の動画の4分40秒あたりです)。


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世間的にはマーゴット・ロビーに似ていると言われることが多いみたいですね。↓の動画ではマーゴット・ロビーの方がエマ・マッキーに間違われたというエピソードを披露しています。


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*以下ネタバレです

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆ネタバレ

オーティスはひょんなことからいじめっ子の同級生アダムの性の悩みを解決する。その場に居合わせたメイヴから料金をとって性の相談を受ける「セックス・クリニック」を開くことを提案され、オーティスは相談を、メイヴが予約を担当する役割分担で活動が始まる。校内で次第に評判となり、オーティスのもとには生徒たちから様々な相談が寄せられるようになる。クリニックの活動の中でオーティスはメイヴに好意を寄せるようになるが、メイヴは水泳部のジャクソンと付き合い始めてしまう。

 

オーティスの家の風呂の工事のため配管工のヤコブとその娘のオーラが、頻回にオーティス宅を訪れるようになる。ヤコブとオーティスの母ジーンは次第に互いに惹かれあっていく。オーラがオーティスの学校に転校してくることになり、二人も親しくなっていく。

 

アダムの作文がコンクールで賞を取る。しかしそれは校長である父親に認められたいアダムがメイヴに代筆を依頼したものだった。オーティスはすぐに作文がメイヴのものであると見抜く。メイヴは自分を理解してくれるオーティスに次第に惹かれていくようになり、ジャクソンとの交際を終わらせる。しかし、オーティスはオーラと付き合い始めており、メイヴは自分の気持ちを伝えられなかった。学校のダンスパーティーでメイヴの兄がドラッグを売っていたことが発覚する。兄を庇ったメイヴは停学処分となってしまう。

 

オーティスの親友でゲイのエリックはかつて自分を虐めてきたアダムと学校の居残りをさせられる。その教室でエリックはアダムにキスをされ、彼がバイセクシャルであることを知る。アダムは父親の意向で士官学校へ転向させられてしまう。(シーズン1)

 

メイヴはこれまで数々の作文を代筆してきたことをネタに校長に脅しをかけ、学校に復帰。オーティスとクリニックを再開する。メイヴはオーティスに秘めていた自分の思いを打ち明ける。混乱したオーティスはオーラからメイヴとの仲を疑われてしまい、関係がギクシャクしてしまう。そんな中、オーラは自分のセクシャリティパンセクシャル全性愛)であること、気持ちが友人のリリーに向いていることに気付く。オーラはオーティスに別れを告げる。ヤケを起こしたオーティスは自宅でパーティーを開き、酔った勢いでオーラとメイヴの悪口を大勢の前で言ってしまい、二人から嫌われてしまう。

 

水泳部のエースとしての重圧に苦しむジャクソンはわざと怪我をする。学内の演劇のオーディションに出たジャクソンはロミオの役を勝ち取る。演技に自信のないジャクソンは校内の秀才の一人、ヴィヴから指導を受ける。ジャクソンとヴィヴは次第に友情をはぐくんでいく。怪我治り水泳部に復帰できる状態になってしまったジャクソンはもう水泳をしたくないことをレズビアンの二人の母親に打ち明けられなかったが、ヴィヴの後押しで両親と向き合う。

 

イケメン転校生のラヒームが現れ、エリックと付き合うようになる。しかし、時を同じくして士官学校を退校処分になったアダムが街に戻ってきて、エリックは二人の間で揺れる。リリーが総監督、ジャクソン主演のセクシー版シェークスピアが開演され、その舞台に突如としてアダムが乱入。アダムはエリックに自身の思いを伝え、エリックはそれを受け止める。

 

薬物依存症メイヴの母がメイヴにとっての異父妹を連れて現れる。母子の絆を少しずつ取り戻していく二人だっが、メイヴの向かいに住むアイザックから彼女の母親がまた薬をやっていると聞かされたメイヴは泣く泣く児童相談所に通報。娘二人と引き離されることになったメイヴの母親は激高する。

 

父のレミから正直でいろと助言を受けたオーティスはオーラに謝罪し、メイヴには自分の思いを伝えようとするが、メイヴに思いを寄せるアイザックの妨害を受け、彼のメッセージはメイヴに伝わらず終いになってしまう。

 

更年期障害と感じ病院を受診したジーンは自身が誰かの子供を妊娠しているとわかる。(シーズン2)

 

◆感想(ネタバレあり)

出てくるキャラクター一人一人が本当に魅力的な作品です。エイミーやルビー、ジャクソンの両親、サンズ先生、ヘンドリックス先生といった主要キャラの動きを受ける側の、つまり脇役のキャラクターにも深みを感じさせるものになっていて群像劇として非常に厚みがあります。

 

脇役の中でもエイミーは特に優遇されてますね。あまり頭の良いキャラクターとしては描かれませんが、一匹狼のメイヴと最初から友達だったり、ちゃんとスティーブというグットガイを彼氏に選んでいたりと、なんだかんだで一番人を見る目があるキャラクターとして描かれていたのではないでしょうか。

 

彼女が痴漢にあったトラウマを乗り越えるシーズン2第7話はシリーズを通して最も爽快感のある場面のひとつでしょう。シーズン1の第5話でも女性同士が団結する場面がありましたが、これは恐らく「Me too 運動」を意識したものなのではないでしょうか。

 

待ちきれないシーズン3ですが、恐らく「家族」というテーマがより掘り下げられるのではないかと思います。オーティスには弟か妹が出来ることが確定しましたし、ジーンとヤコブが再婚した場合、元恋人のオーラまでもが兄弟関係になることになり、非常にややこしい家族関係になります。後味の悪い別れとなってしまったメイヴの親子関係も気になるところですし、家庭にも職場にも居場所を失ったグロフ校長にも救いがあって欲しいと思います。

 

すれ違った ままになってしまったオーティスとメイヴの恋の行方も気になります。個人的な予想なのですが、この二人はシーズン3の最後で仲直りし交際が始まるのではないでしょうか。ただ、物語全体の最後には卒業後の進路の都合等で二人は別れを選ぶのではないかと思います。オーティスが両親の離婚のきっかけを作ったというトラウマを抱えていることを考えると、彼自身が円満な別れを経験するというのが、本当の意味での彼の救いになりそうな気がするからです。

 

シーズン3は既に撮影が始まっているようですが、配信日はまだ未定です。シーズン2の直後からは始まらないということのようなので、その辺もどのように物語が展開されるのか気になるところです。

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dramanavi.net

 

~追記~

Twitterからの情報によると、シーズン3は今年の10月配信のようです。

 

 

◆まとめ

・性を切り口に人生に普遍的に大切なものを語る作品

・登場人物全員が愛しくなる魅力に満ちている