潜水服は蛾の夢を見る

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ゴジラ vs コング

【輸入盤CDR】ゴジラVSコング(Godzilla vs Kong)

制作国:アメリカ(2021)

日本公開日:2021年7月2日

上映時間:114分

監督:アダム・ヴィンガード

脚本:エリック・ピアソン、マックス・ボレンスタイン

撮影:ベン・セレシン

出演:アレクサンダー・スカルスガルド、ミリー・ボビー・ブラウン 他

あらすじ:モンスターの戦いで壊滅的な被害を受けた地球。人類は各地で再建を計り、特務機関モナークは未知の土地で危険な任務にあたりながら、巨大怪獣のルーツの手がかりを掴もうとしていた。そんななか、ゴジラが深海の暗闇から再び姿を現し、世界を危機へ陥れる。人類は対抗措置として、コングを髑髏島(スカルアイランド)から連れ出す。人類の生き残りをかけた戦いは、やがてゴジラ対コングという未曽有の対決を引き起こす。(映画.comより)


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評価:★★★☆☆

 

◆感想(ネタバレなし)

本当は5月16日に公開だったはずの今作ですが、ようやっと観ることが出来ました。”良いところも悪いところも『キング・オブ・モンスターズ』に似ている”と思いました。

dreamofmoth.hatenablog.com

良いところはキャラクターとしての怪獣の描き方です。これは上述の感想でも書きましたが、このモンスターバースの好きなところは正義の味方である怪獣をてらいもなく描き切る姿勢にあります。これについては今作でもしっかり踏襲されていて、このシリーズとしての明確な方針なのでもあると思います。これだけでも個人的には満足でした。

 

一方で前作でも良くなかったお話の面は前作以上に苦しいです(笑)。とにかくあらゆる設定と登場人物の行動をゴジラとコングを戦わせるという舞台作りに“かなり強引な形で”寄与させる作りになっています。

 

前作に乗れた人はは乗れるし、乗れなかった人は乗れない作りだと思います。その意味ではシリーズとしての一貫性のあるまっとうな続編の気がします。 

 

以下ネタバレです

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆ネタバレ

巨大生物の発生源と考えられる地球の中心の空洞には膨大なエネルギーに満ちていることがわかる。密かにメカゴジラを開発していたAPEX社のシモンズ(デミアン・ビチル)は、メカゴジラの動力源としてそのエネルギーを狙い、研究者のリンド(アレクサンダー・スカルスガルド)をそそのかす。リンドは旧知の中であるコングの研究者アンドリュース(レベッカ・ホール)を説き伏せ、コングを使って地球の空洞にあるエネルギー源の在処を探そうとする。道中でコングの宿敵であるゴジラの襲撃を受けるが、どうにか一行は空洞への入り口がある南極にたどり着く。空洞を進んだ先には緑の大地が広がっていて、その先にはエネルギーの塊があった。

 

一方、ゴジラメカゴジラの気配を察知し、APEX社がメカゴジラの研究をしている香港に上陸する。空洞に人間が侵入した気配を察したゴジラは地中に向けて熱戦を吐き、香港から空洞に至る巨大な穴が空く。コングは穴を伝って香港へ向かいゴジラと戦うが瀕死の重傷を負ってしまう。

 

エネルギーを充填したメカゴジラが出現。ギドラのテレパシー能力を基に開発されたメカゴジラは自らの意思で動き始め、ゴジラと戦う。その圧倒的な力を前にゴジラはとどめをさされそうになるが、リンドの活躍で復活したコングがそれを救う。二匹は共闘してメカゴジラを撃破。ゴジラは海に去り、コングは空洞で暮らし始める。

 

◆感想(ネタバレあり)

タレントの伊集院光が今作、というよりレジェンダリーが制作した一連の『モンスターバース』について、非常に共感できる感想を語っていたので引用したいと思います。以下の内容は2021年6月28日に放送されたTBSラジオ『伊集院 深夜の馬鹿力』で、今作の試写を観た伊集院光が話していたものです。

 僕が物心ついたときには、ゴジラっていうのは毎年、東宝チャンピオン祭りっていういろんなアニメの中に必ず一本子供向けに、ゴジラ対なになにっていうのが入ってるんです。(中略)悪い意味であれは子供向けの“怪獣プロレス”だからって言われているゴジラの時代に、俺は子供だったからベストにそれとマッチングして、その怪獣プロレスをスゲー楽しんでたわけ。で、ある程度の歳までいったところでそれももう廃れちゃってゴジラ辞めちゃう、っていうこの流れが俺にとっての実体験のゴジラ。(中略)子供だましと言われた怪獣プロレスを、あの頃の子供をもう一回だまそうとして作ってくれてるのがこのハリウッドの『ゴジラ』とか『キング・オブ・モンスターズ』とか、あと今回戦う髑髏島にいたキングコングの最初のやつとかが、新たな、大人になってもゴジラが観たいあの頃の少年たちをもう一回だまそうっていう映画で、自分が思ったのはなんかね、きちんと説明しようと思えば「そんなことあるかーい」っていうシーンはいっぱい出てくるんですけど、それを懐かしいと思えるかどうかなんだよね。

ゴジラは確かに放射能の脅威や原爆のメタファーの存在ですが、多くのゴジラファンは伊集院光と同じように、元々は子供のときに怪獣プロレスに夢中になった人がほとんどだと思います。もちろん作品として評価が高いのは1954年の『ゴジラ』なのですが、いきなりこれを観てゴジラファンになった人は少数派ではないでしょうか。良くも悪くも『モンスターバース』はハリウッドの莫大な予算とCG技術で怪獣プロレスが観たい人を満足させるための作品群だと思います。

 

その点で今作は一定の期待に応えてくれた作品だと思います。間違いなくこの作品でやるべきことの最低限はやり切ったと思います。ただ、期待通りのことをやってくれたことを評価したい反面、期待以上のものは無かったのが今作の残念なところでもあります。

 

具体的に言えば、怪獣の画的な見せ方に真新しいものがほとんどありませんでした。『ゴジラ2014)』『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』では怪獣の登場シーンが結構良くできていたと思うのですが、今作はコングもゴジラメカゴジラもとても淡泊な登場の仕方をしてしまいます。コングとゴジラは初出でないから仕方ないとしても、メカゴジラの登場シーンはもう少し気を使って欲しかったと思います(ワーナーが公式にyoutubeに上げているコングの登場シーン)。


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唯一新しさを感じたのが、最初のコングとゴジラ海上での戦闘シーンで、ゴジラの尾に船の錨が引っ掛かって引っ張られる状態になり、海中にいるゴジラの姿は見えないにも関わらずゴジラに引っ張られている船は動いているので、ゴジラが迫ってきているのがわかるというシーンです。(↓こちらもワーナーが公式にあげているそのシーンです)


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こちらの記事によるとレジェンダリーは東宝との正式な契約には至っていないもののモンスターバースの続編を作成する意向があるようです。今作の監督のアダム・ヴィンガードはもしモンスターバースの新作が出来るなら、

人間の出番は30%くらいで、あとは怪獣。”この手の映画はこういうもの”という常識をひっくり返してほしい

と述べており、継続するとしてもこのシリーズは今作と同じような怪獣バトルとそれに奉仕するためだけの人間ドラマの方針を貫いていくのでしょう。これは別にそういうものだと思って観れば悪いことではない気がします。

theriver.jp

ただ、そうなるのであれば今作の怪獣の画的な見せ方は不安を残すものになります。怪獣をどう描くかというほとんど“怪獣大喜利”であるこのシリーズにおいて、ちょっとネタ切れになってきてしまった感が否めませんでした。

 

コングとゴジラの戦いに決着をつけつつも両方を立てることには成功していて、これは良く考えられているとおもいました。コングがゴジラに負けてしまってもキャラクターとしての魅力を損ねないのは、単に「コングはゴジラに負けたけど、メカゴジラに留めをさした」のような勝ち負けの問題ではなく、全体を通してコングを主人公とする冒険物語に仕立てたことで、これから外の世界を冒険して成長していくコングが既に世界の王として君臨しているゴジラに負けてしまうのは”しょうがないこと”なのだということを序盤から上手く観客に刷り込んでいるからなのだと思います。怪獣の画的な見せ方は新しくなかったですが、キャラクターとしての描き方はやっぱり考え抜いてあるということなのでしょう。

 

不満も書きましたが総じて悪くはなかったと思います。怪獣のキャラクターを大事にしてくれるこのシリーズは信頼できるので、是非続編を作って欲しいと思います。

 

◆まとめ

・前作『キング・オブ・モンスターズ』を楽しめた人は楽しめる

・怪獣の画的な見せ方にもう少し新しさが欲しかった

・怪獣のキャラクターとしての描き方はとても良い