潜水服は蛾の夢を見る

主に映画の感想を語るブログです

竜とそばかすの姫

竜とそばかすの姫 (角川文庫)

制作国:日本(2021年)

上映時間:121分

日本公開日:2021年7月16日

監督:細田守

脚本:細田守

作画監督青山浩行

声の出演:中村佳穂、成田凌 他

あらすじ:高知県の自然豊かな田舎町。17歳の女子高生すずは幼い頃に母を事故で亡くし、父と2人で暮らしている。母と一緒に歌うことが大好きだった彼女は、母の死をきっかけに歌うことができなくなり、現実の世界に心を閉ざすようになっていた。ある日、友人に誘われ全世界で50億人以上が集う仮想世界「U(ユー)」に参加することになったすずは、「ベル」というアバターで「U」の世界に足を踏み入れる。仮想世界では自然と歌うことができ、自作の歌を披露するうちにベルは世界中から注目される存在となっていく。そんな彼女の前に、 「U」の世界で恐れられている竜の姿をした謎の存在が現れる。(映画.comより)


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評価:★★★☆☆

 

◆感想(ネタバレなし

細田守作品は『時をかける少女』『サマーウォーズ』『おおかみこどもの雨と雪』『バケモノの子』『未来のミライ』を観ています。今作と同じインターネットの世界を描いた『サマーウォーズ』、直近の作品である『未来のミライ』にはあまり乗れなかったので、今作は期待半分、不安半分という感じで鑑賞しました。結論としては、その2作よりはおもしろかったけど、全体としてはあまり乗れない作品でした。

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多くの人が同じことを考えたのではないかと思いますが、この話は”細田守流アレンジの美女と野獣”なのだと思います。だから主人公すずのアバターの名前がベルなのでしょう。『美女と野獣』は醜い野獣は実は美しい王子様でしたという話なのに対し、今作美しい歌姫のアバターの正体は実は田舎の普通の女の子、というわけです。

 

お話面にはあまり乗れなかった私ですが、演技、演出は良かったと思います。これについてはネタバレありの感想で述べたいと思います。

*以下ネタバレです

 

 

 

 

 

 

◆ネタバレ

ベルはすずの友達、ひろちゃんのプロデュースのもとUの中でも最大規模のライブを行うが、その会場に竜が乱入してくる。竜はUの中で数々の道場破りをしているアバターで恐れられる存在だった。竜のアンベイル(=現実社会で何者なのかを暴くこと)を目論むジャスティンとの戦いが繰り広げられるが、竜は会場から逃げ出す。この出来事以降、竜のことが気になるようになったすずはひろちゃんと共にりゅうのことを調べ、Uの中で城と呼ばれている竜の棲み処を見つけ出す。最初はベルを拒絶する竜だが、すずが竜のためだけに作った歌を聞くなどして次第に心を許すようになる。しかし、竜の城はジャスティンの知るところとなり、城は焼き討ちされてしまう。ベルは竜を助けに向かうが、竜は姿を消す。竜は子供達から人気があったため、世界中の子供達が竜を支援する動画をアップする。すずはその中に、自分と竜しか知るはずのないメロディを口ずさむ男の子の動画を見つける。その動画の中にその子の兄、恵も現れる。恵こそが竜だった。恵の家は父子家庭で、兄弟は父親からの虐待にあっていた。LIVE配信で虐待の事実を知ったすず達は恵を助けようとする。すずの同級生しのぶくん、カミシン、ルカちゃんの活躍で恵の居場所を特定したすずは、自ら兄弟のもとに向かい二人を助け出す。戻ってきたすずは同級生、合唱仲間のおばさん達、父親と自分大切にしてくれている人達に出迎えられる。

 

 

◆感想(ネタバレあり)

クライマックスの展開がかなり気になりました。虐待の事実に気付く→恵は「助ける」というすずを信用しない→信頼を取り戻すために歌う決断をする→恵の父親の妨害に合う→兄弟の居場所をどうにか特定する→48時間以上経たないと保護されないことがわかる→自ら東京に行く、というこの流れは本当にスリリングかつエモーショナルで良かったのですが、いざ東京に着いた後は割とあっさり事態が解決してしまいます。実際には虐待されている子供を救うというのは大変なことですし、ここに至るまでの恵の訴えの切実さにはリアリティがあったので、この解決のあっさりさ加減は拍子抜けでした。

 

良かったのは竜と恵が相手を拒絶するシーン。どちらもカメラが大きく顔に寄って非常に圧迫感があり、演じている佐藤健の上手さもあって、思わずスクリーンの前でみをすくめてしまうような迫力でした。

 

そしてなんと言ってもお父さんがすずを送り出す場面です。ここではお父さんのメール(LINE?)の文面が、演じる役所広司の声だけで表現されるのですが、このお父さんの不器用ながらも愛情を持って娘を育ててきた感じが短い場面で凝縮されていて、不覚にも落涙してしまいました。個人的にはすずの好物が刺身ではなく“たたき”であることが結構ポイントな気がしていて、ただの刺身ではなくひと手間加えなくてはいけない“たたき”を作るというところにお父さんの愛情が表現されているのではないかと思います。

 

◆まとめ

・クライマックスの展開には不満

・演技・演出は総じて良かった。