潜水服は蛾の夢を見る

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ガメラ 大怪獣空中決戦

ガメラ 大怪獣空中決戦 大映特撮 THE BEST [DVD]

制作国:日本(1995)

劇場公開日:1995年3月11日

上映時間:95分

監督:金子修介

特技監督樋口真嗣

脚本:伊藤和典

出演:伊藤剛志、中山忍 他

あらすじ:太平洋上で巨大漂流環礁が発見された。同じ頃、九州の姫神島で住民が消失する事件が発生。住民は消える直前の無線で、鳥の存在を訴えていた。調査のため島を訪れた鳥類学者・長峰の前に、巨大な怪鳥が姿を現す。一方、海上保安庁の米森と保険会社の草薙は、環礁上で発見された石版の碑文を解読。その結果、環礁はガメラ、怪鳥はギャオスという古代怪獣であることが判明する。全国民が震撼する中、2大怪獣の戦いは九州から東京へと舞台を移し、壮絶な空中バトルが幕を開ける。(映画.comより)


1月15日公開『ガメラ 大怪獣空中決戦』アンコール上映告知【4K】(劇場予告version)

 

評価:★★★★★

 

◆感想(ネタバレなし)

4K上映が観たかったのですが…コロナの影響でどうしても行けない事情があり、自宅で通常版の鑑賞をすることになりました( ;∀;)

 

やっぱり傑作だなぁと改めて思う作品です。私が今作ですごく好きなのは、「ガメラを人類の味方として描きつつチープになってない」というところです。ただ、そこに大きく貢献しているのは実はガメラそのものよりも敵役のギャオスのSF的な描き方の巧みさにあるような気がします。特に長峰がペリットを発見するシーンと、予告編にある木立の上を飛ぶギャオスを初めて目にするシーンは、強くギャオスという怪獣の実在感を感じられる素晴らしい場面です。ギャオスの存在が日常と地続きのように感じられる作りは、今作の映画としての質を大きく高めている部分だと思います。今観返すと終盤に出てくるギャオスを恐れて地方に逃げようとする人々の様子が、コロナ疎開の様子と重なったりしてなんとも不思議な感覚です。

 

特撮面では多くの方々指摘していますが、クライマックスの東京の街並みのミニチュアが見事です。飲食店の看板や道路標識、洗濯物など本当に細かく作ってあります。今後こうした作品はCGに移行していくはずなので、大変貴重な映像と言えると思います。

 

人間側のドラマが厳しいというのが怪獣映画の常なのですが、今作はその点でもよくできている作品だと思います。詳しいことは後述しますが、一言で言えば人間ドラマにあまり多くを盛り込み過ぎないシンプルな作りであることが良かったのではないかと思います。

 

本作の予算はwikipediaによると6億円だそうです。ちなみに『シン・ゴジラ』の予算はこちらによると十数億円とのことですから、シン・ゴジラの約半分の予算で作った作品ということになります。それでいて怪獣映画のクオリティとしては負けないレベルの作品なのですから、費用対効果という点でも素晴らしいの一言です。

*以下ネタバレです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆ネタバレ

長峰中山忍)と刑事の大迫(蛍雪次郎)は環境庁審議官の斎藤(本田博太郎)からギャオスの捕獲作戦の立案を求められる。自衛隊による福岡ドームにギャオスを閉じ込める作戦が展開されるが、そこにガメラが現れ作戦は頓挫する。逃げたギャオスを追ってガメラも飛び立ち、怪獣達は行方不明となる。

 

福岡でガメラによる被害の方がギャオスより大きかったことから、自衛隊ガメラの撃退を優先する。ギャオスは木曽山中に再び現れ、それを追ってガメラも出現。現場にいた米森(伊藤剛志)と長峰ガメラが庇ったことで、米森はガメラが人類の味方であることを確信する。

 

米森が環礁調査から持ち帰った勾玉を持っていた浅黄(藤谷文子)はガメラと心身が呼応するようになり、ガメラとともに眠りにつく。

 

富士山樹海に潜伏していたギャオスは巨大に成長し、東京に出現する。目覚めたガメラも現れ、二匹の怪獣による戦いが始まる。ガメラはギャオスを倒すと浅黄とのつながりを断ち切って海へと去っていく。

 

◆感想(ネタバレあり)

ネタバレなしの感想で述べた通り、人間ドラマがシンプルなのが今作の良いところの一つだと思います。基本的に登場人物が眼前の事態を解決しようとすること以外はしないんですよね長峰と米森とのロマンスが匂わす程度にはありますが、二人とも凄く自分の職務に対して真面目な人で、あまり感情が大きく表に出る行動も取りません。もっと二人のロマンスを掘り下げたり、もっと二人が自分の責任の重さに慄いたりもできたと思うのですが、そういう方向で描くことは敢えてしていないのだと思います。これは草薙親子も同様で、父子家庭であるという設定はあまり大きく掘り下げられず、それぞれがやらなくてはいけないことに取り組むというのがお話のほとんどです。この登場人物が自分の仕事を一生懸命やるだけというスタイルは後年の『シン・ゴジラ』もそうですが、怪獣映画にはすごく合った人間ドラマの作り方なのだと思います。

 

このドライさは今作の大きな魅力ではあるとは思うのですが、浅黄の描き方はちょっと説明不足な気もします。彼女の取った行動がどういうふうにガメラの役に立っていたのかは正直よくわかりませんでした。また、終盤で″ガメラは私達のために戦っているの。だからよ”というセリフがありますが、浅黄がそこまでの責任を感じて行動するキャラクターには見えませんでした。浅黄を演じた藤谷文子が映画初主演だったこともあるのかもしれませんが、ちょっと朴訥した感じの女の子に見えてしまい、そういうセリフを言う熱さを内面に宿しているようには感じられませんでした。

 

ただ、やっぱり映画としてめちゃめちゃクオリティが高いことは変わりません。怪獣同士のバトルをクライマックスに持ってくる怪獣映画の王道の作りでこれだけのクオリティというのは圧巻だと思います。邦画、洋画含めた全て怪獣映画の中でも(そんなにたくさん怪獣映画があるわけではないですが…)最高峰の1作です。

 

今回の4K上映の際に、中谷忍の舞台挨拶や藤谷文子のビデオメッセージがあったようですね。こういうの見るとやっぱり劇場で観たかったと思ってしまいます。『令和ガメラ』ぜひ作って欲しいのですが、どうなるでしょうか。

news.yahoo.co.jp


中山忍「令和版ガメラが見たい」監督に直訴! 『ガメラ 大怪獣空中決戦』ドルビーシネマ上映


『ガメラ 大怪獣空中決戦』藤谷文子さんビデオメッセージ(フルバージョン)

 

◆まとめ

・怪獣映画の最高峰

・ドライな人間ドラマも魅力

 

ところでこのガメラの続報は全然無いみたいなのですが…。なんか角川のサイトからはlong verが観られなくなってますね。↓はyoutubeに落ちてたlong verです。

www.youtube.com

 

以前WOWOWぷらすとで取り上げられていた回も良かったのでリンクを貼っておきたいと思います。


いまさら聞けないガメラ!【WOWOWぷらすと】