潜水服は蛾の夢を見る

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逃げるは恥だが役に立つ ガンバレ人類!新春スペシャル!!

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完全に期待の上を行く出来でした。野木亜希子恐るべし!!

 

今作では性的マイノリティーのことがかなり意識的に取り上げられていたように思います。レギュラーキャラクターの沼田さんがゲイでしたが、今作でもゆりちゃんのレズビアンの同級生の花村が登場しますし、みくりと平匡は生まれてくる子供の″性別が将来変わる可能性”を考えて名前をつけます(ここはかなりハッとさせられました)。でも今作がスマートなのは、性的マイノリティそのものをテーマにしているわけではないというところにあると思います。あくまで『逃げ恥』が一貫してテーマとしてきた”人と人とが関係を作っていくことの大変さとその裏にある尊さ”という枠組みの一要素として性的マイノリティを取り上げているに過ぎません。花村がレズビアンであることを告白する展開はかなり唐突に出てきますが、話の腰を折られた感じがしないのはこの大枠がぶれないためだと思います。

 

もうひとつ印象的だったのは、やはり新型コロナウイルスに関する劇中の報道が、本当にTBSの当時のニュース映像であることです。地上波のテレビ局のドラマの大きな強みを活かしてきたと感心しました。連ドラのときに再三いろんな番組のパロディをやってきた『逃げ恥』というドラマの中で、ガチのニュース映像、ガチで今現実に起きていることを取り上げるということの皮肉さは強烈でした。とても勇気のいることだったとは思いますが、支持したい筋書きと演出だったと思います。

 

そしてラスト、亜河に泣かれてしまった平匡が言うセリフ”もう焦りません”のところに、テーマだった”人と人とが関係を作っていくことの大変さとその裏にある尊さ”が戻ってくるのが素晴らしいです。夫婦になることも父と母になることも親子になることも一朝一夕にはできないのだから、平匡の言う通り焦らずやっていくしかないのでしょう。

 

上述のようなテーマを全面に出す一方で、ゆりちゃんと風見のように、関係がうまく作れそうにないときに適切なところまで他者と距離を取るということも否定しないのが今作の抜け目の無さです。考え抜かれた脚本だと思います。

 

敢えて苦言を一ヶ所呈するとすれば、部下の産休、育休やコロナ騒動への対応などに追われる「上司の大変さ」に寄り添ったエピソードが無かったことでしょうか(一応灰原さんはそのポジションだったのかもしれませんがちょっと弱かった気がします)。ただいろいろな要素をここまでまとめた脚本にこれ以上は求めすぎな気もします。総じて個人的には大満足な出来の一本でした。