潜水服は蛾の夢を見る

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ワンダーウーマン 1984

【映画パンフレット】 ワンダーウーマン 1984 キャスト ガル・ガドット、クリス・パイン、クリステン・ウィグ

制作国:アメリカ(2020)

上映時間:151分

監督:パティ・ジェンキンス

脚本:ジェフ・ジョンズ 、デビッド・キャラハム

撮影:マシュー・ジェンセン

出演:ガル・ガドットクリス・パイン 他

あらすじ:スミソニアン博物館で働く考古学者のダイアナには、幼い頃から厳しい戦闘訓練を受け、ヒーロー界最強とも言われるスーパーパワーを秘めた戦士ワンダーウーマンという、もうひとつの顔があった。1984年、人々の欲望をかなえると声高にうたう実業家マックスの巨大な陰謀と、正体不明の敵チーターの出現により、最強といわれるワンダーウーマンが絶体絶命の危機に陥る。(映画.comより)


映画『ワンダーウーマン 1984』日本版予告 2020年12月18日(金) 全国ロードショー

 

評価:★★☆☆☆

 

◆感想(ネタバレなし)

つまらなくはなかったけど、ちょっと物足りなかったというのが正直な感想です。

 

お話として伝えたいテーマは明確なのですが、そのテーマをどのように描くかということの検討が不十分だったように思います。そのせいで見方によっては結構感じ悪い話になってしまった気がします。また、テーマと直接的に関係しない描写については割といい加減なところが多かったように思います。

 

アメコミならではの非人間的な動きも含むアクションシーンは楽しいし、ガル・ガドットは相変わらず美しいしで決して見て損とは思わないですが、同じアメコミ原作のMCU作品の完成度に慣れてしまうとやっぱりちょっと物足りない感は否めません。

*以下ネタバレを含みます

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆ネタバレ

スミソニアン博物館に新任の宝石学の専門家バーバラ(クリスティン・ウィグ)がやってくる。着任早々バーバラはFBIから宝石の調査を依頼される。その宝石にはラテン語で1つだけ願いを叶えると記されていた。その場に居合わせたダイアナ(ガルガドット)は亡くなった恋人のスティーブ(クリス・パイン)に会いたいと願う。ダイアナと親しくなったバーバラは彼女のようになりたいと願う。

 

翌日バーバラのもとに実業家のマックス(ペドロ・パスカル)が現れる。マックスはバーバラをそそのかし、宝石を自分のものにする。かねて宝石のことを調べていたマックスは宝石に宿る力が本物であることを知っていた。マックスは自らに宝石の力が宿るように願う。マックスはその力を使って人々の願いを叶えることで、宝石のもう一つの能力=願いを叶えた相手に代償を払わせることによって、自分の権力を次々と高めていく。

 

生き返ったスティーブに会ったダイアナは宝石の力が本物であること、それには邪悪な神の力が宿っていることに気づく。スティーブとともにダイアナはマックスを探し出すが、力を失いたくないバーバラはマックスに加担する。スティーブを生き返らせた大証で力が弱まっているダイアナは二人を取り逃してしまう。

 

力を取り戻すためにダイアナは願いを取り消し、チーターに変貌したバーバラを倒す。マックスが人々の願いを集めるために使っていたテレビ放送を逆に利用して、願いを取り消すよう全世界に呼び掛ける。その最中にソ連から米国にミサイルが発射され、マックスの息子が危機に陥る。マックスは息子を守るために願いを取り消し、世界は平穏を取り戻す。

 

◆感想(ネタバレあり)

今作のテーマは「自分にとってだけ都合のいい世界などあり得ない」ということなのだと思います。このテーマ自体はわかるのですが、描き方があまり良くない気がします。

 

クライマックスでダイアナが人々に願いを取り下げてもらうように頼むとき、”この世界はあるがままで美しい”と語りかけます。このセリフは物語の最後にも出てくるのですが、私はこれに非常に引っ掛かるのです。”この世界があるがままで美しい”と思えるのは恵まれたごく限られた人達だけなのではないかと思うからです。具体的には主人公のダイアナはもちろん、ヴィランのマックスだって一番望んでいた息子からの愛情を最初から得ていたわけで、こうした人達にとっては確かに世界は元から美しかったのだと思います。でも誰からも相手にしてもらえない孤独に苦しんでいたバーバラはどうなのでしょうか。彼女が宝石に願ったことはダイアナの言う″あるがままの世界”では得られなかった切実な願いだったのではないでしょうか。その割には彼女に対してはフォローがないまま今作は終わってしまいます。ダイアナとの戦いに敗れた彼女がその後どうなったのか作中では明らかになりません。

 

バーバラのように精神的に、あるいは経済的に肉体的に苦しみながら生きている人は現実の世界に確かに存在するのです。なんだか今作はそういう人たちに「何も望まずそのまま生きていけ」言っているように感じてしまいました。”世界が美しい”と感じられるかなんて個人の主観であって、誰かから主張として押し付けられるものではないと思うのです。

 

気になるところは他にもあります。序盤のパーティーに潜入した時点で、ダイアナは宝石がマックスの手に渡っていることに勘づいていたにも関わらず、そこで再会したスティーブとやおらイチャイチャし始めてしまうのです。百歩譲ってここは再会が嬉し過ぎたし、マックスがそこまで危険な人物だとは知らなかったからしょうがないとしても、その後マックスを追う道中でも花火の中を飛んでみたりして、なんだか起こってることの深刻さの割にのんびりしている感がどうも否めません。マックスが彼にとっては未来の機械に驚く展開はある種のお約束展開だし楽しいパートなのですが、深刻な事態が進んでいることに勘づいているなかでこういうことをやってしまうと、単にこの二人が不謹慎なだけに見えてしまいます。

 

終盤でスティーブの言葉を思い出しながら空を飛ぶ場面も重要とは思えなかったし(そもそも飛行機は別に風を感じて飛ぶものじゃない気がするし)、てっきり敵のいるところに飛んでいったのかと思ったら自宅に鎧を取りに行っていただけというのもなんだかがっくりする展開でした。やはり脚本はもうちょっと改善の余地があったのではないかと思います。

 

文句を色々言いましたが序盤のショッピングモールでのアクションシーンは良かったです。こういう現実の街並みに非現実ヒーローが現れるというのは、やはりこの手のジャンルの醍醐味だと感じられました。

 

◆まとめ

・テーマはわかるけど描き方が良くない。

・脚本にやや難がある。