潜水服は蛾の夢を見る

主に映画の感想を語るブログです

名探偵コナン ハロウィンの花嫁

劇場版 『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』オリジナル・サウンドトラック

制作国:日本(2022)

日本公開日:2022年4月15日

上映時間:110分

監督:満仲勧

脚本:大倉崇裕

総作画監督須藤昌朋

声の出演:高山みなみ山崎和佳奈 他

あらすじ:ハロウィンシーズンの東京・渋谷。コナンたち招待客に見守られながら、警視庁の佐藤刑事と高木刑事の結婚式が執り行われていたが、そこに暴漢が乱入。佐藤を守ろうとした高木がケガを負ってしまう。高木は無事だったが、佐藤には、3年前の連続爆破事件で思いを寄せていた松田刑事が殉職してしまった際に見えた死神のイメージが、高木に重なって見えた。一方、同じころ、その連続爆破事件の犯人が脱獄。公安警察の降谷零(安室透)が、同期である松田を葬った因縁の相手でもある相手を追い詰める。しかし、そこへ突然現れた謎の人物によって首輪型の爆弾をつけられてしまう。爆弾解除のため安室と会ったコナンは、今は亡き警察学校時代の同期メンバー達と、正体不明の仮装爆弾犯「プラーミャ」との間で起こった過去の事件の話を聞くが……。(映画.com)


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評価:★★★★☆

 

◆感想(ネタバレなし)

今作の脚本を担当する大倉崇裕は『紺青の拳』の脚本も務めていました。私はコナンの劇場版にストーリーの面でのおもしろさはあまり求めていないので、脚本はあまり気にならないのですが、それにしたって『紺青の拳』はあまり脚本が良かったとは言えないので正直今作もあまり期待はしていませんでした。

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しかし結論から言えば、今作はもちろんコナンの劇場版らしいつっこみどころはあるにしても、テーマが明確に絞られていてとても観やすい造りになっていたと思います。

 

今作のテーマは″亡くなってしまった人の思いは、生きている人の中に残っている”ということなのだと思います。今作はすでに亡くなってしまっている安室以外の「警察学校組」の話がフィーチャーされます。4月公開の映画でなぜ″ハロウィン”を題材にするのかずっと不思議だったのですが、本来のハロウィンは死者の霊が現世に戻ってくるというお祭りであることを考えると、実はこの舞台にもテーマに対する必然性がちゃんとあるわけです。BUMP OF CHIKENの主題歌『クロノスタシス』もこのテーマに凄く合っている曲で良かったと思います。エンドロールでこの曲が流れるなかで、安室がするある行動がベタなんだけど非常に良くて、独特の余韻を残してくれます。

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私は最近の原作を追っていないので、「警察学校組」のことは知らなかったのですが、中盤の安室の回想で4人のことが語られるので、鑑賞には全く問題はありませんでした。この安室の回想は(つっこみどころが無いことも無いのですが)警察学校組のキャラクター達の使命感や能力の高さの表現として申し分ない上、その4人が力を合わせても取り逃がしてしまうほど犯人が強敵であることも表現できていて、お話の構成として非常に巧くはまっている場面だと思います。演出も不気味かつスリリングで、今作の全体の印象の良さの多くの部分はこの回想パートが担っているような気がします。

 

クライマックスのアクションの浮世離れ感というか馬鹿馬鹿しさはこれまで以上です(笑)。でも今作に関してはこれも大きなプラス要素になっていると思います。というのも今作の犯人「プラーニャ」はロシアを拠点とした爆弾犯なので、当然ロシア人という設定のゲストキャラクターも出てきます。昨今の情勢を考えるとロシア人キャラクターを描くのは難しいところだったと思うのですが、クライマックスの浮世離れ感がそれを中和してくれていたように思います。

*以下ネタバレです

 

 

 

 

 

 

◆ネタバレ

佐藤刑事と高木刑事の結婚式はただの演習だった。警察OBの村中が結婚式を挙げることになっているのだが、その村中のもとに脅迫状が届いており、結婚式の警護を捜査一課が務めることになっているのだった。

 

首輪型爆弾をつけられてしまった安室は公安の地下シェルターに自身を隔離し、そこにコナンを呼び出し。3年前に警察学校の同期達とプラーニャに遭遇した事件について語る。3年前、安室はプラーニャを取り逃がしてしまったものの、松田はプラーニャの2種の液体が混ざることで爆発する仕組みの爆弾を解除することに成功していた。

 

村中の婚約者のクリスティーヌに贈り物が届く。代理で受け取りに行ったコナンと少年探偵団だったが、それは3年前の事件と同じ仕組みの爆弾だった。コナンは爆弾に仕込まれた液体を採取し、間一髪のところで爆発から逃れる。コナンが採取した液体は公安によって解析が進められる。

 

コナン達が遭遇した爆弾事件の捜査をしていた千葉刑事が何者かに拉致される。犯人は交渉の窓口に松田を指定してくる。高木刑事が松田に変装し指定された場所へ向かう。千葉刑事を拉致したのは「ナーダ・ウニチトージティ」というロシアの民間人部隊だった。リーダーのエレニカを初め、メンバーは皆プラーニャに家族や友人を殺されており、目的はプラーニャへの復讐だった。エレニカはかつて松田がプラーニャの爆弾を解除したことを知っており、その知識を求めてきたのだった。捜査一課と公安警察が現場に踏み込み、千葉刑事の奪還に成功するも「ナーダ・ウニチトージティ」には逃げられてしまう。

 

参列者無しの状態で村中とクリスティーヌの結婚式が執り行われる。クリスティーヌの正体がプラーニャだと見抜いたコナンは、「ナーダ・ウニチトージティ」と首輪型爆弾の解除に成功した安室とともにプラーニャを追い詰め確保に成功する。しかし、プラーニャの爆弾は起動しており、渋屋のスクランブル交差点で2つの液体が混ざって爆発が起ころうとしていた。コナンはアガサ博士が新たに作った巨大ボール射出ベルトを使って二つの液体が混ざることを阻止する。実はコナンは7年前に萩原に会っており、その時の出来事から今回の方法を思いついたのだった。

 

◆感想(ネタバレあり)

公開前は″理想の花嫁”企画をめぐるゴタゴタがあったりもしましたが、蓋を開けてみればストーリー的にも″花嫁”はさほど重要じゃなかったという(笑)。本当にこの企画は”花嫁”とつけてしまったがために損をしましたね。

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クライマックスの展開をわかりやすくするためにしょうがないことではあるのですが、プラーニャの爆弾がそんなに解除にてこずるような爆弾に見えないというのは、間違いなく文字通りのツッコミどころでしょう。2つの液体を混ぜなきゃいいだけなら最初からガムつっこんどけばいいじゃん、ってやっぱり思ってしまいます(笑)。

 

松田に扮する高木刑事がエレニカに啖呵を切る場面は、松田としての演技を続けつつも恐らく高木刑事の本心でもあるのだろうという発言で、めちゃくちゃカッコイイと思いました。欲を言えば同じ発言を、高木刑事は知らなかったけど、生前の松田も言っていたという場面が回想で描かれてたら、テーマにも即しているしもっとエモい場面になったのではないかと思いました。

 

ただ、総じてネタバレなしの感想のところに書いた通り、描きたいテーマに対してストーリーの筋としてはまとまっていたと思います。コナンの劇場版としてはややトリッキーなテーマだったと思いますが、巧く描けていたのではないでしょうか。

 

あと本筋と関係ないですが、怪我をした小五郎に病院の麻酔が全く効かなくて″耐性があるのかしら”と看護師が訝る場面は、原作に対するメタなつっこみになっていてめちゃくちゃおかしかったです。

 

◆まとめ

・”亡くなってしまった人の思いは、生きている人の中に残っている”ということがテーマ

・つっこみどころもあるがテーマに即した観やすい造りになっている