Fukushima50
制作国:日本(2020)
上映時間:122分
監督:若松節朗
脚本:前川洋一
あらすじ:2011年3月11日午後2時46分、マグニチュード9.0、最大震度7という日本の観測史上最大となる地震が起こり、太平洋沿岸に押し寄せた巨大津波に飲み込まれた福島第一原発は全電源を喪失する。このままでは原子炉の冷却装置が動かず、炉心溶融(メルトダウン)によって想像を絶する被害がもたらされることは明らかで、それを防ごうと、伊崎利夫をはじめとする現場作業員や所長の吉田昌郎らは奔走するが……。(映画.comより)
映画『Fukushima 50』(フクシマフィフティ)予告編
評価:★★★☆☆
◆感想(ネタバレなし)
3月12日の金曜ロードショーで鑑賞しました。
今作は結構批判も多い作品みたいで、ネット上では“自民党のプロパガンダ映画”、”事実と異なる”などの意見が出ています。映画秘宝でも2020年のトホホ映画の4位になっていました。
個人的な感想としては、あまりプロパガンダっぽさは感じなかったです。結構おもしろかったと思いました。特に前半のベントを試みる場面は非常に緊迫感があって(不謹慎かもしれませんが)非常におもしろかったです。
残念だったのは話が進むにつれてこのお話に本来求められる緊張感を削ぐような描写が頻回に出てくるということです。あとこれは全般的に言えることなのですが、何か命令を下す際に「いいからやれ」「いいかれやめろ」みたいなことを怒鳴りあってから命令の理由を説明する、という展開が目立つのが気になりました。最初から命令の理由を言っておくれ…。
ただ、総じてネットで叩かれるほど悪い映画ではないように個人的には思いました。
*以下ネタバレです。
◆ネタバレ
1号機の原子炉内部の圧が上昇したため、圧を外に逃がすための作業=ベントの実行が決定される。放射性物質を外に放出することになるため近隣住民に避難の指示が出される。その間に東電本店側から視察に来る総理への対応を依頼され、現場は圧迫されるがベントは成功する。原子炉を冷やすために吉田(渡辺謙)は海水注入を指示するが、海水の不純物の影響が懸念されるため官邸からは中止の指示が入る。吉田はその指示を黙殺する。2号機の原子炉内の圧力が上昇し、吉田は年配の職員を除いた人員を退避させる。爆発の危機が迫るが、2号機建屋の壁に穴が開いて、そこから圧が漏れ出したことで爆発は回避される。作業にあたっていた伊崎(佐藤浩市)は避難所に向かい、一度は会えないことを覚悟した家族と再会を果たす。伊崎のいる避難所に在日米軍からの支援物資が届く。2年後、吉田が食道癌で亡くなり、伊崎はそこで弔辞を読み上げる。
◆感想(ネタバレあり)
ネタバレなしの感想で述べたように、前半の1号機のベントを手動で試みるシーンが緊迫感があって良かったです。酸素ボンベの使用可能な時間と放射線の線量の上限が同時に迫って来る中で作業を完遂しなければならないという、非常にわかりやすいスリリングな場面でした。
また、電源車の電圧が合わないものだったり、重すぎてヘリコプターで運べなかったりといったアクシデントも未曾有の災害に対する混乱ぶりが伝わりました。
一方で、残念だったのは東電の本店や、総理大臣、官邸といった現場の人々を煩わす分かりやすい悪役を配置して人災的な側面を強調してしまったことです。懸命に作業に当たっていた現場の人より、この悪役側の人達の方が目立ってしまう結果になっていたのは、事実はともかくとして作劇としては巧くなかったと思います。『Fukushima50』というタイトルの割に現場にいた50人のうち何人かしかフォーカスがあたっていないのも、こうした現場にいた人以外に悪い意味で尺を割き過ぎているからだと思います。
例えば『シン・ゴジラ』の人間ドラマは徹底的にゴジラをどう対処するかに焦点を当て、それが受けましたが、今作も同じように原発そのものにどう対処するかだけに話の的を絞っておいたほうがおもしろかったのではないかと思いました。
◆まとめ
・前半は面白かった
・人災的な部分が強調されない方が作劇として良かったと思う。