潜水服は蛾の夢を見る

主に映画の感想を語るブログです

セックス・エデュケーション シーズン3

Sex Education Original Soundtrack

 

制作国:イギリス

日本公開日:2021年9月17日(シーズン3/Netflixにて配信)

監督:ベン・テイラー 他

脚本:ローリー・ナン、ソフィー・グットハート 他

出演:エイサ・バターフィールドジリアン・アンダーソン 他

あらすじ:ムーアデール校の新学期。生徒達の欲情が炸裂する中、新校長が就任。オーティスは口ひげを生やし、秘密を胸に登校。ジーンは真実を告げる。(第1話)


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評価:★★★★☆

 

◆感想(ネタバレなし)

待ちに待った新シーズンがやってきました(シーズン1,2の感想は↓)。今シーズンもこれまで同様「自分が真に求めているものは何かを考える」と「他者とのコミュニケーション」をテーマにしていますが、それに加えて今シーズンは「”こうあるべき”からの脱却」ということにフォーカスが当たっていたように思います。

dreamofmoth.hatenablog.com

 

*以下ネタバレを含みます

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆ネタバレ

オーティスは夏休みの間にルビーと体だけのカジュアルな関係になる。しかし、そのことにオーティスは疑問を持ち始めルビーと正式に付き合い始める。ルビーも次第にオーティスに心を開いていくが、ルビーの「愛してる」にオーティスが「愛している」を返せなかったことがきっかけで二人の関係は破綻してしまう。

 

ジーンはヤコブに子供が出来たことを伝える。二人は家族として子供を育てることに決め、ヤコブとオーラがオーティスの家に移り住むことになる。

 

メイブはアイザックからオーティスの留守電を消したことを聞かされる。一度はアイザックに幻滅したメイブだが、彼の誠実な一面にも触れ、次第に距離を縮めていく。

 

新校長のホープはセックス学校という異名のついたムーアデール校を変えるべく、制服着用の義務化、頭髪や装飾の制限など校則を厳格化する。しかし、学校外では彼女は不妊治療が上手くいかないことに悩んでいた。

 

ムーアデール校を解任されたグロフは就職活動と高慢な兄に悩まされる。そんな中で実は料理が好きな自分の一面に気付いていく。

 

ムーアデール校のフランスへの修学旅行が始まる。ひょんなことからバスに乗り遅れたオーティスとメイブは二人きりになってしまう。アイザックが消した留守電の内容をオーティスから直接聞かされたメイブは思わずオーティスとキスをしてしまい、アイザックとの間で揺れ動く。

 

皆が修学旅行に行っている間にエリックは親族の結婚式に出るためナイジェリアへ向かう。そこでエリックは現地の同性愛者のコミュニティに参加し、案内してくれたオバとキスをしてしまう。帰国しアダムと再会したエリックは自身のゲイとしてのアイデンティティの在り方がアダムとは決定的にずれてしまっていることを自覚し、アダムに別れを告げる。

 

失意の中アダムは愛犬マダムと共に犬の競技会(アジリティ)に参加。入賞を逃すが、主催者から健闘を称えられる。

 

ムーアデール校の一般公開日、ホープはセックス学校の汚名を返上しようと奮闘するが、ヴィブとジャクソンが中心になって準備した生徒達が高らかにセックス高校を誇る催しが披露され、ホープは翌日から学校から姿を消す。この出来事をきっかけにムーアデール校の出資者が手を引いてしまったので、ムーアデール校は廃校になることは決まる。

 

ジャクソンはノンバイナリーのキャルと恋仲になる。しかし、ジャクソンはどうしてもキャルを女性として扱ってしまう。そのことの対処の方法が見つからず。二人は関係を終わらせる。

 

メイブはオーティスと付き合うことを決める。しかし、その時メイブのもとにアメリカへの留学プログラムの合格通知が届く。経済的な理由でメイブはそれを断ろうとするが、メイブの母が資金を調達してきたことでそれが叶うようになる。メイブはオーティスに決意を告げてアメリカへ向かう。

 

ジーンが女の子を出産する。その婦人科にホープも来ていた。ホープを励ますオーティスの対応にジーンは息子の成長を感じる。オーティスはもう一度学校でセラピーを始める決意を母に語る。オーティスの去った病室にジーンの出産した赤ちゃんのDNA鑑定書が届く。封を開けたジーンは息を飲んで…。

 

◆感想(ネタバレあり)

なんと言っても感動的だったのは最終話でアダムが犬の競技会に出て評価される場面です。恐らくシリーズを通して初めて彼が得意なことを人から褒められた場面だったのはでないかと思います。ここは思わず落涙してしまいました。

 

象徴的なのはやはり制服の導入です。この作品の大きな魅力だった鮮やかな衣装が全部グレー一色になってしまい、ビジュアル的には大きな変化がありました。

 

制服を初めホープが導入した校則の厳格化ですが、考えてみるとここでの校則は日本の高校では割とよくあるものばかりです。でも、浮世離れするほどリベラルだったムーアデール校にこれが導入されると急に窮屈になった気がしてしまいます。この一連の校則はこうあるべきという“型”のメタファーなのではないかと思います。だからこそその型にはっきりとノーを突き付けるムーアデール校の一般公開日は大きなカタルシスがあります。男らしいとか、女らしいとか、学生らしいといった漠然と世の中が求めるものではなく、それぞれがなりたいものになればいいという高らかな宣言のように思いました。

 

ただ、正直ちょっと不満だったところもあります。それは登場人物の数に対して話数が少なすぎるということ。そのせいで何人かは描き方が中途半端になってしまった印象です。ルビーはこれまで描かれなかった彼女の繊細な内面が描かれたにも関わらず、オーティスとの破局後に極端に出番が減ってしまいますし、前シーズンで活躍したヴィブもジャクソンとの絡みが激減したことで随分出番が減ってしまいました。アイザックとメイヴの関係性の描き方ももう少し厚みが欲しかったです。

 

また、ムーアデール校の一般公開日は確かに盛り上がる話なのですが、生徒たちが一致団結して舞台を準備する過程を、もう少し描いてくれていたらもっと上がったのになぁと思いました。

 

まあ、要するに“もっと見せて!!”ということなのですが(笑)。総じて今シーズンも非常におもしろかったです。そんな私の期待通りシーズン4の制作が決まりました。大好きなキャラクター達との再会が今から楽しみです。

dramanavi.net

 

◆まとめ

・「”こうあるべき”からの脱却」ということがテーマになっている。

・今シーズンも非常におもしろかった

・話数が少なすくて描き方が中途半端になってしまったところがあるのが残念