潜水服は蛾の夢を見る

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閉鎖病棟 ーそれぞれの朝ー

【映画パンフレット】 閉鎖病棟 それぞれの朝 監督 平山秀幸 キャスト 笑福亭鶴瓶、綾野剛、小松菜奈、坂東龍汰、平岩紙、

製作国:日本(2019)

上映時間:117分

日本公開日:2019年11月1日

監督:平山秀幸

脚本:平山秀幸

撮影:柴崎幸三

出演:笑福亭鶴瓶綾野剛 他

あらすじ:長野県のとある精神科病院にいる、それぞれの過去を背負った患者たち。母親や妻を殺害した罪で死刑判決を受けたものの、死刑執行に失敗し生きながらえた梶木秀丸。幻聴が聴こえて暴れるようになり、妹夫婦から疎まれて強制入院させられた元サラリーマンのチュウさん。父親からのDVが原因で入院することになった女子高生の由紀。彼らは家族や世間から遠ざけられながらも、明るく生きようとしていた。そんなある日、秀丸が院内で殺人事件を起こしてしまう。(映画.comより)


『閉鎖病棟―それぞれの朝―』予告編

 

評価:★☆☆☆☆

 

◆感想(ネタバレなし)

『コロナショック』で新作の映画がなかなか見られず、映画好きとしては寂しい思いの今日この頃です。せっかくなのでこの機に2019年に観た映画で感想をアップ出来なかったものをあげたいと思います。

 

まずはこの『閉鎖病棟』です。第43回日本アカデミー賞の優秀作品賞含め11部門にノミネートされています(結果ひとつも受賞できなかったみたいですが)。

 

結論から言うといろいろな舞台設定が都合のいい話だなと思ってしまいました。例えば笑福亭鶴瓶演じる秀丸閉鎖病棟にいる理由です。あらすじにも書いてある通り死刑執行に失敗したために閉鎖病棟にいるのですが、いまいちこの設定が呑み込めません。死刑に値するような犯罪を犯した人がそんなところにいたら危ないと思うのですが…。この設定以外にもいろいろ気になったところがあるのですが、ネタバレになるのでネタバレありの感想で書きたいと思います。

*以下ネタバレを含みます

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆ネタバレ

映画全体としての感想は先に述べた通り、いろんなことが都合のいい映画ということに尽きると思います。

 

なぜ死刑囚が精神科に入院することになったかは作中では「そういう前例があったから」としか説明されません。たまたま秀丸はいい人でしたけど、普通に考えたらめちゃめちゃ危ないですよね。そもそも秀丸が死刑を宣告されるきっかけになった事件も、秀丸は確かに可哀そうだけどいきなり殺す?という感じの事件で、「気の毒な境遇の善良な死刑囚」という大変ご都合主義な主人公を生み出すためのものにしかなっていませんでした。

 

殺人に至る動機が弱いというのは終盤で起きる殺人でも同様です。これも単にクライマックスを盛り上げるための舞台装置にしかなっていなかった気がします。画的にもこのシーンは秀丸のナイフに重宗が自ら刺さりにいっているようにしか見えませんでした。

 

全体的にいろんなセリフや描写が「良き事気」なだけであまり中身を伴っていないことにとにかくイライラさせられる作品です。例えばチュウさんの退院を反対する家族を小林聡美演じる看護師が叱咤しますが、家族の在り方に一介の看護師が口を出すなど出過ぎた真似以外の何物でもない行為です。

 

他にもラストで秀丸が車椅子から立って歩こうとすることをさも良きことのように描きますが、別に秀丸は歩こうとしていなかったわけではなく障害で歩けなかっただけですし、秀丸にとって歩くという行為に何か象徴的な意味合いがあるような伏線は別に無かったので、お話としてもあまり上手くなかった気がします。

 

正直あんまりほめるところが無い作品だと思います。個人的には2019年でワーストの作品でした。

 

◆まとめ

・いろんな設定がご都合主義

・「良き事気」なセリフや描写にイライラさせられる