潜水服は蛾の夢を見る

主に映画の感想を語るブログです

薄暮

薄暮(はくぼ)

制作国:日本(2019年)

日本公開日:2019年6月21日

上映時間:52分

監督:山本寛

脚本:山本寛

総作画監督:近岡直

声の出演:桜田ひより、加藤清史郎 他

あらすじ:東日本大震災で心に傷を負った福島県いわき市の女子高生・佐智は、友人や家族とどこか距離を置きながら、人にも恋にも無関心に生きてきた。幼い頃からバイオリンを続け、高校でも音楽部に所属する彼女は、文化祭で四重奏を披露するため日々練習に励んでいる。一方、震災で実家が帰宅困難地域となり、いわき市に避難してきた男子高校生・祐介は、当たり前の景色が失われてしまう現実に直面し、“美しい今”を絵画として残すべく描き始める。展覧会に出品する夕景画を描くため田園風景を訪れた彼は、そこで出会った佐智と惹かれ合っていく。(映画.com)


『薄暮』予告45秒Ver

 

評価:★★★☆☆

 

◆感想(ネタバレなし)

事前の情報を全く知らないで観てしまったのですが、クラウドファンディングで制作された映画のようですね。上映時間52分と割とこじんまりした感じの作品です。

 

地理が本当に苦手で大変恥ずかしいのですが、本作の舞台である福島県いわき市福島県の中で太平洋に面している市のひとつで、もちろん東日本大震災では津波で大変大きな被害を受けた地域だそうです。今作では登場人物の身近な人が亡くなったとか、津波で流された瓦礫が描写されたりといったことはないのですが、いわき市という地理が頭に入っていれば彼らが震災でどれほどのショックを受けたかは劇中で説明されなくてもわかるものだと思います。

 

私の中で“こども店長”で成長が止まっていた加藤清史郎の声変わりにびっくりです(笑)。もう17歳なんですね。

 

主人公二人の出会い方はちょっとロマンチック過ぎますが、この二人のキャラクターそのものは(少しステレオタイプなところもありますが)結構地に足がついていた気がします。

 

主人公二人はいずれも芸術を得意としているわけですが、佐智はバイオリンをずっと続けているのに対し、祐介は美術を震災を機に始めた設定になっています。震災の前と変わらない生活を続ける努力をしている人も、新しい生活に順応するために努力している人も応援する意味が込められているのではないかと思います。

*以下ネタバレです

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆ネタバレ

佐智と祐介は学校帰りに待ち合わせるようになるが、ある日の帰り道に佐智は祐介のスケッチブックに祐介の初恋の人の絵が描かれているのを見てしまう。それを機に佐智は祐介と距離を置き学園祭の練習に没頭する。祐介が学園祭に佐智のバイオリンを聞きにやってくる。互いの気持ちを二人はそこで伝え合い交際が始まる。

 

◆感想(ネタバレあり)

クライマックスで祐介が佐智の絵を描いてくるのがベタだけど良かったですね。

 

ちょっと気になったのは祐介の絵は全般的に上手いのですが、なぜか二人が初めて出会ったバス停で描く田園の夕暮れの風景の絵はなんだかのっぺりしていてあんまり上手じゃないのです。この絵は二人にとって結構大切な絵のような気がするのですが…。

 

あと、佐智が脱衣所で服を脱ぐシーンと寝苦しくてベッドで服を脱ぐシーンがあるのですが、これは何だったのだろうかと。サービスシーンなのだとしたら作品のトーンとあまりに合ってないですし、なんだか意図がよくわからないシーンでした。

◆まとめ

クラウドファンディングで作られたこじんまりとした印象の映画

・震災の前と変わらない生活を続ける努力をしている人も、新しい生活に順応するために努力している人も応援する意味が込められている。