天気の子
制作国:日本(2019)
上映時間:114分
日本公開日:2019年7月19日
監督:新海誠
脚本:新海誠
作画監督:田村篤
プロデュース:川村元気
音楽:RADWINPS
声の出演:醍醐虎汰朗、森七菜 他
あらすじ:離島から家出し、東京にやって来た高校生の帆高。生活はすぐに困窮し、孤独な日々の果てにようやく手に入れたのは、怪しげなオカルト雑誌のライターの仕事だった。そんな彼の今後を示唆するかのように、連日雨が振り続ける。ある日、帆高は都会の片隅で陽菜という少女に出会う。ある事情から小学生の弟と2人きりで暮らす彼女には、「祈る」ことで空を晴れにできる不思議な能力があり……。(映画.comより)
評価:★★☆☆☆
◆感想(ネタバレなし)
新海誠監督×川村元気プロデュース×RADWINPSという大ヒットした『君の名は。』体制でがっつり儲けに来たなって感じです(笑)しかも実際に記録的な日照不足が大きな問題になっており、時相的にも「雨が降り続ける東京」という舞台は大変タイムリーなものになりました。
新海誠監督の作品はその『君の名は。』と『秒速5センチメートル』『言の葉の庭』を観ていますが、正直どれもあんまり乗れない話でした。私にとって新海誠監督作品はあくまで画を観るものという感覚です。
今作についても、良かったと思うところもあったのですが、全体的にはあまり乗れない作品でした。
ただ、やっぱり画は美しかったです。『言の葉の庭』でも感じましたが、新海監督作品の雨や水の描写はほんとうに美しいですね。十八番の都市部の描写ももちろん見事です。あと個人的にアニメ映画では食べ物が美味しそうに描かれることが非常に重要だと思うのですが、陽菜が作るチャーハンがめちゃめちゃ美味しそうなのが良かったです。
*以下ネタバレです。
◆ネタバレ
帆高は陽菜とその弟の凪と3人で、陽菜の力を使って天気を晴れにして欲しいという依頼を受けるサイトを立ち上げる。SNSで拡散され3人の仕事は順調に進んでいく。人に喜ばれるということを経験した陽菜は大きなやりがいを感じていた。
しかし、家出をしてきた帆高と未成年二人で暮らしている陽菜と凪の元には警察の追手が迫る。危機感を抱いた3人は家を出て近くのラブホテルに逃げ込む。その夜、陽菜は帆高に天気を晴れにする度に自分の体が透明になっていくこと、自分は天気を安定させるための人柱であることを告げる。夜の内に陽菜の体は完全に消えて空へと昇って行き、ずっと雨だった東京が快晴となる。
帆高は陽菜が天気を晴れにする力を手に入れた廃墟の屋上にある鳥居に向かう。帆高は空に昇って陽菜を連れ戻す。それ以来東京は3年間雨が降り続いた。保護観察の期間を終えた帆高は再び都市部に戻り、陽菜との再会を果たす。
◆感想(ネタバレあり)
二人で一緒にいられない世界なら世界の方を変えてやる、という振り切った結末を持ってきました。帆高の決断そのものは私は支持しています。世界を守るために陽菜を犠牲にしてもいいとなると、それはファシズム的な考え方のような気がするからです。
ただ、帆高の決断を登場人物が皆が全肯定というのもそれはそれで気持ち悪かったです。就活が上手くいかない夏美、我が子となかなか会えない須賀など割とリアルな“世界”と向き合っている人達のことにあまり掘り下げがなく、帆高と陽菜の“セカイ”を肯定するための駒になってしまったのが残念でした。
また、帆高と陽菜の下した決断で傷ついた人のこともきちんと描いて欲しかったと思います。そういう人達の姿を認めた上で、それでも自分たちの決断は正しいと主張する話だったら私はもっと『天気の子』が好きになったと思います。
ただここで欠点として挙げたことは、すべて新海監督の作家性でもあるのだと思います。まさにこの点に魅力を感じる人もいるのでしょうから、『天気の子』が作品として駄目というより、すでにネタバレなしの感想で述べたように私が新海作品に合わないのだと思います。
個人的なこの作品の好き嫌いはさて置き、『君の名は。』という本当に大衆受けする作品を作った後に、こんなに尖った作品を持ってきたところには敬意を表したいと思います。いくらでも置きに行く作品が作れる状況でよくもまあこんな作品を作りました。その点で『君の名は。』よりずっと評価すべき作品だと思います。
◆まとめ
・画の美しさは流石
・新海監督の作家性が炸裂している