潜水服は蛾の夢を見る

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ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密

映画 ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密 ポスター / 2022 Fantastic Beasts: The Secrets of Dumbledore エディ・レッドメイン ジュード・ロウ エズラ・ミラー マッツ・ミケルセン キャサリン・ウォーターストン ダン・フォグラー アリソン・スドル ハリー ポッター ファンタスティック ビースト #2

制作国:アメリカ(2022)

日本公開日:2022年4月8日

上映時間:143分

監督:デビッド・イェーツ

脚本:J・K・ローリング、スティーブ・クローブ

撮影:ジョージ・リッチモンド

出演:エディ・レッドメインジュード・ロウ 他

あらすじ:魔法動物を愛するシャイでおっちょこちょいな魔法使いニュートが、恩師のアルバス・ダンブルドアや魔法使いの仲間たち、そして人間(マグル)と寄せ集めのチームを結成し、史上最悪の黒い魔法使いグリンデルバルドに立ち向かう。その中で、ダンブルドアと彼の一族に隠された秘密が明らかになる。(映画.comより)


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評価:★☆☆☆☆

 

◆感想(ネタバレなし)

『ファンタスティックビースト』シリーズの第3作目です。元々3部作の予定だったのが5部作に延長されたので今作はちょうど折り返し地点ということになります。2年ごとに作られるはずだったそうですが、今作は前作の公開から4年経っています。映画評論家の添野さんの解説によると、パンデミックの影響に加えて、脚本の大幅な見直しがあったことで制作が遅れたようですね。

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ただ、それほど大きな脚本の見直しがあったにも関わらずその成果はあまりでてないかな…というのが正直な感想です。これは前作にも感じたことなのですが(前作の感想は↓にあります)、続き物の割には新規の設定が唐突に出てきてしまうのです。よく考えると『ハリー・ポッター』もそういう傾向があったのですが、『ハリー・ポッター』では魔法界についての常識を知らないハリーがそれを学んでいく過程とセットだったのであまり気になりませんでした。今作ではその唐突に出てくる設定が登場人物全員にとっては初めから常識だったものとして描写されるので、なんとなく観客だけが置いてきぼりになる感じが否めなかったです。

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お話の流れとしても不自然な部分があり、正直登場人物が何をしたいのかよくわからないところが多かったです。総じてやっぱり脚本に難がある作品だと思います。

*以下ネタバレです

 

 

 

 

 

 

 

 

◆ネタバレ

ニュートはダンブルドアの命で麒麟(日本語字幕では「キリン」になっていましたが、たぶんこの麒麟です)の赤ちゃんの救出に向かう。麒麟は人の魂を理解する生き物で善良な魂を持つものの前で跪くとされていた。双子の麒麟のうち一匹は確保するが、もう一匹はクリーデンスに奪われてしまう。

 

助手のバンディに麒麟を託し、ニュートは兄のテセウスホグワーツの呪文学の教師ラリー、マグルのジェイコブとともにベルリンに向かう。そこでドイツ摩法省の裏切りに直面し、グリンデルバルドが証拠不十分で無罪となってしまう。

 

グリンデルバルドはダンブルドアの殺害をクリーデンスに命じる。ダンブルドアはクリーデンスを圧倒するが、戦いの中でクリーデンスに余命がないこと、彼が兄のアバフォースの息子であることに気付く。

 

グリンデルバルドは魔法界のリーダーに立候補する。魔法界のリーダーは麒麟が跪いた人間がなることになっており、グリンデルバルドはクリーデンスが奪ってきた麒麟を殺し、その後自分の魔術で蘇生し自分の意のままに操れる麒麟を生み出す。一度はグリンデルバルドに決まりかけるが、ニュート達が生きている本物の麒麟を連れて現れ、その麒麟ダンブルドアと候補者の一人のサントスの前で跪いたことで、グリンデルバルドは退却を迫られる。

 

クリーデンスはアバフォースの元に戻り、クイニーはジェイコブと結婚することになる。クイニ―の結婚式にティナも現われ、ニュートと再会を果たす。

 

◆感想(ネタバレあり)

物語を進めるということに全労力が割かれてしまい、人物の描き方はスカスカだった気がします。

 

特に扱いがひどかったのがクイーデンスです。一作目では準主役級の扱いだったのに、作品が進むごとに扱いが雑になります(笑)。今作に至ってはアバフォースの息子であることともうすぐ死ぬことの”設定”しか描写されませんでした。正直、本人にはまったく記憶がない「ダンブルドア家」に彼がなぜこだわるのかこの話からわからなかったです。

 

クイニーもマグルと結婚できる世界を作りたくてグリンデルバルド側についたのに、終始グリンデルバルドに怯えているだけで、前作でなんでグリンデルバルド側についたのかますますわからないままでした。

 

魔法動物に関しても、不死鳥が死の近いものに灰を落とすとか、麒麟のお辞儀で魔法界のリーダーを選定するとか『ハリー・ポッター』シリーズの中で全く描かれなかった設定をいきなりここに持ち込んでくるので、時系列では後の話になる『ハリーポッター』のなかに矛盾やつっこみどころが出来てしまうので、これも止めて欲しいと思いました。特に麒麟ダンブルドアに跪くのはやめて欲しかったなと、ダンブルドアは確かに善人ですが、完全無欠の善人では無かったというのが今作で描かれていることですし『ハリー・ポッター』本編でも重要なところだったと思うので、この描写には何か裏切られた気がします。

 

ダンブルドアのジェイコブに対する扱いが割と雑なのも気になります。ダンブルドアがジェイコブに渡した杖は結局何の役にも立ちませんでしたし、自衛の手段のない彼をグリンデルバルドに何度も近づけるなんてリスクしかないのに平気でダンブルドアはそういうシチュエーションを作ります。はっきり言ってジェイコブが怒っていいのではないかと思うのですが(笑)。麒麟ダンブルドアよりもジェイコブに跪くべきでしょう。

 

唯一良かったのはグリンデルバルドを演じたマッツ・ミケルセンですね。ジョニー・デップより彼の方がどことなく哀愁があって合っていたような気がします。ただ、グリンデルバルドも結局『ハリー・ポッター』のヴィランのウォルデモートのようなただの悪い人になってしまっていたのが残念でした。呪術廻戦の夏油のように、彼には彼でヴィランである切実な理由が描かれていて欲しかったです。

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◆まとめ

・前作同様唐突な設定が多い

・その割には人物の描きこみが甘く、脚本に難がある。