潜水服は蛾の夢を見る

主に映画の感想を語るブログです

ボバ・フェット / The Book of Boba Fett

The Book of Bob Fett 2022 Calendar: The Manndalorian TV show - 16 month 2022 - 2023 Calendar

制作国:アメリカ(2021)

監督:ロバート・ロドリゲス(1,3,7話)、ステフ・グリーン(2話)、ケヴィン・タンチャローエン(4話)、ブライス・ダラス・ハワード(5話)、デイブ・フィローニ(6話) 

脚本:ジョン・ファブロー(1-7話)、デイブ・フィローニ(6話)

出演:テムエラ・モリソン、ミン=ナ・ウェン 他

あらすじ:雇われの身でなくなったボバ・フェットはフェネック・シャンドを伴い、タトゥイーンで再起する(Disney+ホームページより)


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評価:★★★☆☆

 

◆感想(ネタバレなし)

『マンダロリアン』で復活したボバ・フェットの単独シリーズがついに始まりました。『マンダロリアン』はジョン・ファブローとデイブ・フィローニの2人で作り上げたものでしたが、今作はエグゼクティブプロデューサーとしてデイブ・フィローニの名前があるものの、クレジット全体を見るとファブローの方が主導権を持って作った印象です。フィローニは『バッド・バッジ』もあったのでそっちで忙しかったのかもしれません。

 

今作もマンダロリアン同様、1話40分程度の尺でしっかりおもしろいものを見せてくれるので、とても良かったと思います。ただ、『マンダロリアン』と比べると『マンダロリアン』の方がおもしろかったとは思います。

 

これはディズニーの傘下でドラマ化する以上仕方なかったことなのかもしれませんが、ボバ・フェットがモラルがあり過ぎる描かれ方なのが気になりました。もちろん『スターウォーズ』の映画の中でもちょっとしか出てこない謎の多いキャラクターだったので、解釈や脚色には幅を持たせていいキャラクターではあると思うのですが、それにしたってハン・ソロを炭素冷凍してジャバ・ザ・ハットに売り渡した人物と同一人物とは思えない感じになっています。一応今作の劇中でなぜボバにそういう変化が起きたのか説明はあるのですが、ちょっと弱いかなと思いました。

 

また、全7話のうち5話と6話にはボバ・フェットはほぼ出てこないという作りも、一応ボバ・フェットを主人公にしているシリーズとしてはどうなんだろうと思ってしまったのも事実です。これについてはネタバレありの感想で書きたいと思います。

*以下ネタバレです。

 

 

 

 

 

 

 

◆ネタバレ

サルラックの体内から抜け出したボバはタスケン・レイダーに助けられる。最初は捕虜の身だったボバだが、タスケン達との絆を深め仲間として認められる。しかし、彼がタスケン・レイダーのためにとった行動が裏目に出て、タスケン・レイダー達はパイク団に皆殺しにされてしまう。居場所を失ったボバは荒野を彷徨う中で、フェネック・シャンドを助ける。フェネックとともに愛機ファイアスプレー(スレーブⅠ)を取り戻したボバは、ディン・ジェリン(マンドー)との冒険を経て、再びタトゥイーンに戻る。ピブ・フォーチュナを始末して新たなモス・エスパの大名となったボバは何者かに命を狙われる。ボバはモス・エスパの街が市長と密約を結んだパイク団の支配下にあることに気付き、パイク団と戦うための仲間を集める。

 

一方、ディン・ジェリンはナブー・スターファイターを改造した新たな宇宙船でグローグーに会いに行く。ルーク・スカイウォーカーのもとでジェダイの修行をするグローグーを見つけるが、直接会うことは愛着を捨てなくてはならないジェダイの掟の中にいるグローグーを苦しめることになるとアソーカ・タノに説得され、ディン・ジェリンはその星を後にする。ルークはグローグーに、ディン・ジェリンが持ってきたベスカーの鎧を受け取る代わりにジェダイになることを諦めるか、鎧を受け取らずヨーダライトセーバーを受け取り修行を続けるかの選択をグローグーに迫る。

 

タトゥイーンでフェネックに再会したディン・ジェリンは、ボバの依頼を受ける。ディン・ジェリンはかつてともにドラゴン退治をしたフリータウン(モス・ぺルゴ)の保安官、ヴァンスを訪ね協力を求める。しかし、パイク団に雇われたキャド・ベインがディン・ジェリンが去った後に現れ、ヴァンスは深手を負ってしまう。

 

パイク団との戦いが始まるが、中立協定を結んでいたはずのファミリーからの裏切りに合い、ボバたちは苦戦を強いられる。しかし、フリータウンからの援軍と帰ってきたグローグー、ボバのペットになっていたランコアの活躍で形勢は逆転。ボバはベインとの一騎打ちを制し、パイク団を倒すことに成功する。ボバの宮殿では重症をおったヴァンズが手術を受けていて…。

 

◆感想(ネタバレあり)

もう途中から完全に『マンダロリアン シーズン2.5』でしたね(笑)。最終話でそれまでの登場人物が集合するところは上がるものの、結局はグローグーとディン・ジェリンが全部持って行ってしまいました。

 

決してつまらなくはなかったのですが、やっぱりマンダロリアンの方が個々のキャラクターがしっかり立っていたように思います。ボバにしても他のキャラクターにしても「なぜモス・エスパの街にそこまでこだわるのか」というのが正直良く分かりませんでした。もう少し各キャラクターの掘り下げがなされていれば、最終話の戦いはもっとエモーショナルなものになったでしょう。

 

ボバの失策が目立つのも気になりました。パイク団に勝手に交渉しに行った結果仲間のタスケンを殺されたり、中立協定を裏切られて仲間がピンチに陥ったり、割とボバが簡単に騙されるせいで周りが迷惑していた気がします(笑)。フェネックにもベインにも“ヤワになった”と言われてますが、本当にそう見えてしまいました。正直フェネックの方がいろいろ優秀でした。最後の戦いもフェネックが一人で敵の拠点に乗り込んで司令官を倒してます。最初からフェネック一人の力で勝てたんじゃ…と思ったり(笑)

 

タトゥイーンのくすんだ街中を走る鮮やかなスピーダーバイクや砂漠を走る列車、最終話で現れたシールドを張る大きなドロイドなど斬新なものもありました。これまで実写のスターウォーズではあまりなかったパルクールや市街地での戦闘もおもしろかったと思います。ただ、そういったビジュアル面でのおもしろさに物語の中身やキャラ立ちの方がついてこられなかった感が否めません。

 

回想のタスケンとの生活のパートは良かったと思います。マンダロリアンに続き、タスケンが非常に文明的に描かれていて、スターウォーズらしいエキゾチズムがありました。スターウォーズの映画では野蛮な民族として描かれたタスケンですが、先住民族であるタスケンにしてみれば後から移住してきた人達の方が侵略者であるという設定は、シンプルながら納得できるものでした。

 

マンダロリアンシーズン3に向けて期待の持てる終わり方でした。思っていた以上にグローグーがあっさり帰ってきたのには驚きましたが、誰よりも父親というものに執着していたルークだからこそ、グローグーの父親の元に戻りたい気持ちを汲んだということなのでしょう。また、ディン・ジェリンとグローグーの冒険が観られるのが楽しみです。

 

~追記~

アソーカとルークが話をする場面は確かにエモいのですし、下の動画のように感動しているファンも多いのですが、良く考えるとどうなのかなと。


www.youtube.com

下のサイトによればアソーカは年齢的には『フォースの覚醒』の時点でも生きている可能性があります。しかしもし生きていたなら、ベンの指導に悩むルークがなぜ彼女の助言を求めなかったのか、という問題が出てきてしまうと思うのです。そうなるとルークを助けられなかった事情=アソーカは『フォースの覚醒』の前に亡くなってしまう、ということがあるのではないかと考えてしまいます。

hitokoto-mania.com

個人的にはこのフィローニ、ファブローの二人でやっているシリーズは、こういう辻褄合わせみたいなところに労力を割かなくてはいけなくなってしまうので、あんまり劇場版の作品の設定には近づかないで欲しいと思っています。

 

◆まとめ

・キャラ立ちが弱い。

・ビジュアル面では良いところも多かった。