潜水服は蛾の夢を見る

主に映画の感想を語るブログです

エイス・グレード 世界で一番クールな私へ

Eighth Grade

制作国:アメリカ(2018)

上映時間:93分

日本公開日:2019年9月20日

監督:ボー・バーナム

脚本:ボー・バーナム

撮影:アンドュー・ウィード

出演:エルシー・フィッシャー、ジョシュ・ハミルトン 他

あらすじ:中学校生活最後の1週間を迎えたケイラは、“クラスで最も無口な子”に選ばれてしまう。待ち受ける高校生活に不安を抱える彼女は、SNSを駆使して不器用な自分を変えようとするが、なかなか上手くいかない。高校生活が始まる前に、憧れの男の子や人気者の女の子たちに近付こうと奮闘するケイラだったが……。(映画.comより)


映画『エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ』予告編

 

評価:★★★★★

 

◆感想(ネタバレなし)

“エイスグレード”というのが日本の何年生にあたるのか、中二と言っている人がいたり中三と言っている人がいたりだったので調べてみたところ↓のサイトがわかりやすかったです。

usasmilelife.com

このサイトによるとエイスグレード=8年生というのは中二にあたるものとなっています。アメリカでは中学校(=middle school)を日本でいう中学二年生で卒業する代わりに高校が1年長いという理解で良いのだと思います。日本語訳で“エイスグレード”が中二と中三の両方があるのは年齢的には中二、社会的な立場としては中学を卒業する年なので中三という2つの意味合いが混ざってしまうためでしょう。いずれにしてもそのぐらいの年齢の子ということです。

 

今作はいわゆるスクールカーストでイケてない立場だった人達にとっては非常に共感できる内容になっています。かく言う私は完全にその立場の人だったのでものすごく主人公のケイラに感情移入してしまいました。アメリカと日本の文化的な違いがあるので、直接的な出来事として日本で同じようなことは起こらないと感じる場面もありましたが、ケイラが抱えている悩みの本質は日本人でも共通のものだと思います。

 

ケイラはYotubeに“イケてる子に成るコツ”の動画を他の人へのアドバイスという体でアップし続けていますが、動画でケイラが話しているのは全て彼女自身がなりたい自分像に他なりません。これ、凄く気持ちがわかります。こうして人へのアドバイスの体で動画を作ることで、ケイラ自身は自分が理想に近づいたような感覚を得られていたのでしょう。しかし現実のケイラは動画の中で自分が言っているアドバイス通りに行動しては空回りしてしまいます。

 

主演のエルシー・フィッシャーの演技が素晴らしかったです。特に良かったのは序盤の父親との食卓シーンです。長いワンカットの会話シーンなのですが、父親役ジョシュ・ハミルトンとの息がぴったりでコミカルなシーンなのですが感心しながら観てしまいました。

*以下ネタバレです

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆ネタバレ

ケイラは高校体験で知り合ったオリヴィアと親しくなる。悩みの相談に乗ってくれる友達ができたことに浮かれるケイラだが、オリヴィアの友人のライリーに身体を求められそうになり落ち込む。ケイラは中学に入学したときに思い描いていた“世界で一番クールな私”になることを諦め、動画を作ることをやめる。その代わりに未来の自分に向けたメッセージ動画を作る。

 

◆感想(ネタバレあり)

ラストでケイラが作った動画の中にある“中学だって乗り越えられたんだから高校でも大丈夫”というセリフがいいですね。これも凄くリアルな感覚だと思います。全てが思い通りに行かなくてもどうにか自分は人生の舵を取っていけるという実感を伴って、少しずつ自分という人間を認められるようになっていくというのは、多くの人に経験があるのではないでしょうか。

 

劇中最後の“あなたになるのが待ちきれないわ”というセリフに大変感動しました。現時点では今年ベストの映画です。

 

監督のボー・バーナムはこれが監督初作品とのことでしたが、大変期待が持てる監督だと思いました。特にシュールな画で笑わせるのが巧いですね。終盤のテーブルにケイラとゲイブが座っているだけの画で劇場に笑いが起きていました。

 

◆まとめ

・文化の違いを問わず共感できる内容。

・監督の今後の作品にも期待がもてます。