潜水服は蛾の夢を見る

主に映画の感想を語るブログです

ウエスト・サイド・ストーリー

West Side Story: A Screenplay

制作国:アメリカ(2021)

日本公開日:2022年2月11日

上映時間:157分

監督:スティーヴン・スピルバーグ

脚本:トニー・クシュナー

撮影:ヤヌス・カミンスキー

出演:アンセル・エルゴート、レイチェル・セグラー 他

あらすじ:1950年代のニューヨーク。マンハッタンのウエスト・サイドには、夢や成功を求めて世界中から多くの移民が集まっていた。社会の分断の中で差別や貧困に直面した若者たちは同胞の仲間と集団をつくり、各グループは対立しあう。特にポーランド系移民の「ジェッツ」とプエルトリコ系移民の「シャークス」は激しく敵対していた。そんな中、ジェッツの元リーダーであるトニーは、シャークスのリーダーの妹マリアと運命的な恋に落ちる。ふたりの禁断の愛は、多くの人々の運命を変えていく。(映画.comより)


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評価:★★★☆☆

 

◆感想(ネタバレなし)

元はブロードウェイのミュージカルで、1961年の『ウエスト・サイド物語』のリメイクである本作ですが、私は舞台版も映画も全て未見で完全に今回が初めての鑑賞でした。感想としては時代背景を知ってないとおもしろく観るのは難しいのではないかというのが正直なところです。↓の添野知生さんの解説は非常にわかりやすかったので鑑賞前に視聴をオススメします。


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以下、その解説を簡単にまとめたいと思います。ウエストサイドという地域はニューヨークのマンハッタンの一部であり、当時は貧しい白人層と移民労働者が暮らしていた地域です。いわゆるスラム街であり、どちらも他に居場所のない白人層と移民労働者の対立が実際にあったようですね。

 

ヒロインであるマリアはプエルトリコ系移民ですが、1940年代後半~1950年代にかけてプエルトリコからの移民が職を求めて大量に移り住んできたという経緯があります。恥ずかしながら私はこの解説で初めてプエルトリコが国ではないことを知りました。添野さんの仰る通りアメリカの自自連邦区という扱いで、一応アメリカ領という扱いのようです。Wikipediaによるとアメリカに対する納税義務はないが、大統領の投票権も無いという体制らしいですね。

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ストーリーとしてはリアリティの面できついところがあります。ここを気にせず観られるかどうかが好みの分かれ道な気がします。個人的にはミュージカルというある種の寓話化、抽象化がなされていたことであまり気にならずに観ることが出来ました。以前、このブログでも取り上げた『ディア・エヴァン・ハンセン』とは別の意味できちんとミュージカルであることの意味があったと思います。

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また、あえて劇中の部屋の造りや照明の当て方を舞台っぽくしていたのではないかと思います。これもひとつの抽象化として機能していたように思いました。

 

今作で主人公トニーを演じるのは『ベイビー・ドライバー』で主人公を演じたアンセル・エルゴート。歌がめちゃくちゃ上手かったです。音域に凄く幅があってびっくりしました。もう一人の主人公マリアを演じるのはレイチェル・セグラー。この方はオーディションで選ばれた新人で、元はyoutubeの歌唱動画で注目を集めた女子高生で、それをきっかけに演技の道に入ってきたというイマドキっぽいキャリアの持ち主です。撮影当時は20歳ですが、どこかあどけなさが残る表情でありつつ芯の強さも感じる演技でまさに適役だったと思います。

 

ただ、その二人を食ってしまうほどの魅力を放っていたのが、アニータ役のアリアナ・デボーズ。今作で第94回アカデミー賞助演女優賞にノミネートされています。ブロードウェイ俳優ということで演技も歌唱も素晴らしかったですが、圧巻だったのがダンスです。「マンボ」と「アメリカ」の2曲で彼女のダンスは特にフィーチャーされるのですが、ここでのパフォーマンスが素晴らしくて全編を通じて彼女のダンスシーンが最も印象に残りました。↓の動画でも彼女のパフォーマンスが絶賛されていますね。


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忘れてはならないのが、バレンティーナ役のリタ・モレノです。この方は1961年版のアニータ役を演じていた役者さんなんだそうですね。なんと90歳で本作に出演されています。全然そうは見えないです。今作のバレンティーナはオリジナルには無かった役所らしいですが、彼女の歌唱シーンが一番今作のテーマを集約している部分で、もの凄く重要なキャラクターを演じています。出演だけでなく制作総指揮にも加わっています。

*以下ネタバレです

 

 

 

 

 

 

 

◆ネタバレ

ダンスパーティーで出会ったトニーとマリアは一目で互いに惹かれ合う。しかし、マリアの兄ベルナルドは白人のトニーがマリアに近づいたことに激怒し、それが発端で「ジェッツ」と「シャークス」が翌日の夜に決闘することになってしまう。決闘を止めるためトニーもその現場に向かうが、兄弟分のリフがベルナルドに刺し殺されてしまったことに激高し、ベルナルドを刺し殺してしまう。事態に警察が介入したことで両陣営とも身を隠さなければならなくなる。ベルナルドの友人だったチノは銃を手にし、復讐のためトニーを捜しに行く

 

トニーはマリアに別れを告げに行くが、その現場をマリアの友人でベルナルドの恋人だったアニータに見られてしまう。アニータはトニーをかくまっていたバレンティーナに、トニーとマリアの関係を知ったチノがマリアを撃ち殺したと嘘をつく。バレンティーナから話を聞かされたトニーは夜の街へ飛び出す。マリアはトニーを見つけるが、同じタイミングでチノがトニーを撃ち、トニーはマリアの目の前で息を引き取る。

 

◆感想(ネタバレあり)

一緒に観た人の指摘で気付いたのですが、今作はたった2日間の出来事なんですね。主人公の二人に関して言えば、出会った日の翌日の夜にはもう死別という超高速展開です(笑)。主人公二人ののキャラクターの感情の動きとしては結構無理がある展開なので、昨今のキャラ立ちが重視されるエンタメに慣れている層の人には合わない部分も多いと思います。事実近くの席に座っていた大学生と思われるグループはつまらなさそうにしてました(笑)。

 

だからこそ、前述の通り時代背景の知識は一応入れてから鑑賞の方が、どんなことが描かれているのかわかりやすいので良いと思います。今作は主人公二人の悲恋というよりも、どこにも居場所が無くなってしまった人たちの暴力の連鎖が止まらない悲劇の方がより力点の置かれている話だと思います。結果的には最初は一番暴力から遠いところにいたチノが引き金を引くことになってしまうというのが、どちらかと言えば悲劇の中心のように思いました。

 

◆まとめ

・歴史的な背景を知ってからみるのがおすすめ。

・アリアナ・デボーズのダンスシーンが見事

ボバ・フェット / The Book of Boba Fett

The Book of Bob Fett 2022 Calendar: The Manndalorian TV show - 16 month 2022 - 2023 Calendar

制作国:アメリカ(2021)

監督:ロバート・ロドリゲス(1,3,7話)、ステフ・グリーン(2話)、ケヴィン・タンチャローエン(4話)、ブライス・ダラス・ハワード(5話)、デイブ・フィローニ(6話) 

脚本:ジョン・ファブロー(1-7話)、デイブ・フィローニ(6話)

出演:テムエラ・モリソン、ミン=ナ・ウェン 他

あらすじ:雇われの身でなくなったボバ・フェットはフェネック・シャンドを伴い、タトゥイーンで再起する(Disney+ホームページより)


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評価:★★★☆☆

 

◆感想(ネタバレなし)

『マンダロリアン』で復活したボバ・フェットの単独シリーズがついに始まりました。『マンダロリアン』はジョン・ファブローとデイブ・フィローニの2人で作り上げたものでしたが、今作はエグゼクティブプロデューサーとしてデイブ・フィローニの名前があるものの、クレジット全体を見るとファブローの方が主導権を持って作った印象です。フィローニは『バッド・バッジ』もあったのでそっちで忙しかったのかもしれません。

 

今作もマンダロリアン同様、1話40分程度の尺でしっかりおもしろいものを見せてくれるので、とても良かったと思います。ただ、『マンダロリアン』と比べると『マンダロリアン』の方がおもしろかったとは思います。

 

これはディズニーの傘下でドラマ化する以上仕方なかったことなのかもしれませんが、ボバ・フェットがモラルがあり過ぎる描かれ方なのが気になりました。もちろん『スターウォーズ』の映画の中でもちょっとしか出てこない謎の多いキャラクターだったので、解釈や脚色には幅を持たせていいキャラクターではあると思うのですが、それにしたってハン・ソロを炭素冷凍してジャバ・ザ・ハットに売り渡した人物と同一人物とは思えない感じになっています。一応今作の劇中でなぜボバにそういう変化が起きたのか説明はあるのですが、ちょっと弱いかなと思いました。

 

また、全7話のうち5話と6話にはボバ・フェットはほぼ出てこないという作りも、一応ボバ・フェットを主人公にしているシリーズとしてはどうなんだろうと思ってしまったのも事実です。これについてはネタバレありの感想で書きたいと思います。

*以下ネタバレです。

 

 

 

 

 

 

 

◆ネタバレ

サルラックの体内から抜け出したボバはタスケン・レイダーに助けられる。最初は捕虜の身だったボバだが、タスケン達との絆を深め仲間として認められる。しかし、彼がタスケン・レイダーのためにとった行動が裏目に出て、タスケン・レイダー達はパイク団に皆殺しにされてしまう。居場所を失ったボバは荒野を彷徨う中で、フェネック・シャンドを助ける。フェネックとともに愛機ファイアスプレー(スレーブⅠ)を取り戻したボバは、ディン・ジェリン(マンドー)との冒険を経て、再びタトゥイーンに戻る。ピブ・フォーチュナを始末して新たなモス・エスパの大名となったボバは何者かに命を狙われる。ボバはモス・エスパの街が市長と密約を結んだパイク団の支配下にあることに気付き、パイク団と戦うための仲間を集める。

 

一方、ディン・ジェリンはナブー・スターファイターを改造した新たな宇宙船でグローグーに会いに行く。ルーク・スカイウォーカーのもとでジェダイの修行をするグローグーを見つけるが、直接会うことは愛着を捨てなくてはならないジェダイの掟の中にいるグローグーを苦しめることになるとアソーカ・タノに説得され、ディン・ジェリンはその星を後にする。ルークはグローグーに、ディン・ジェリンが持ってきたベスカーの鎧を受け取る代わりにジェダイになることを諦めるか、鎧を受け取らずヨーダライトセーバーを受け取り修行を続けるかの選択をグローグーに迫る。

 

タトゥイーンでフェネックに再会したディン・ジェリンは、ボバの依頼を受ける。ディン・ジェリンはかつてともにドラゴン退治をしたフリータウン(モス・ぺルゴ)の保安官、ヴァンスを訪ね協力を求める。しかし、パイク団に雇われたキャド・ベインがディン・ジェリンが去った後に現れ、ヴァンスは深手を負ってしまう。

 

パイク団との戦いが始まるが、中立協定を結んでいたはずのファミリーからの裏切りに合い、ボバたちは苦戦を強いられる。しかし、フリータウンからの援軍と帰ってきたグローグー、ボバのペットになっていたランコアの活躍で形勢は逆転。ボバはベインとの一騎打ちを制し、パイク団を倒すことに成功する。ボバの宮殿では重症をおったヴァンズが手術を受けていて…。

 

◆感想(ネタバレあり)

もう途中から完全に『マンダロリアン シーズン2.5』でしたね(笑)。最終話でそれまでの登場人物が集合するところは上がるものの、結局はグローグーとディン・ジェリンが全部持って行ってしまいました。

 

決してつまらなくはなかったのですが、やっぱりマンダロリアンの方が個々のキャラクターがしっかり立っていたように思います。ボバにしても他のキャラクターにしても「なぜモス・エスパの街にそこまでこだわるのか」というのが正直良く分かりませんでした。もう少し各キャラクターの掘り下げがなされていれば、最終話の戦いはもっとエモーショナルなものになったでしょう。

 

ボバの失策が目立つのも気になりました。パイク団に勝手に交渉しに行った結果仲間のタスケンを殺されたり、中立協定を裏切られて仲間がピンチに陥ったり、割とボバが簡単に騙されるせいで周りが迷惑していた気がします(笑)。フェネックにもベインにも“ヤワになった”と言われてますが、本当にそう見えてしまいました。正直フェネックの方がいろいろ優秀でした。最後の戦いもフェネックが一人で敵の拠点に乗り込んで司令官を倒してます。最初からフェネック一人の力で勝てたんじゃ…と思ったり(笑)

 

タトゥイーンのくすんだ街中を走る鮮やかなスピーダーバイクや砂漠を走る列車、最終話で現れたシールドを張る大きなドロイドなど斬新なものもありました。これまで実写のスターウォーズではあまりなかったパルクールや市街地での戦闘もおもしろかったと思います。ただ、そういったビジュアル面でのおもしろさに物語の中身やキャラ立ちの方がついてこられなかった感が否めません。

 

回想のタスケンとの生活のパートは良かったと思います。マンダロリアンに続き、タスケンが非常に文明的に描かれていて、スターウォーズらしいエキゾチズムがありました。スターウォーズの映画では野蛮な民族として描かれたタスケンですが、先住民族であるタスケンにしてみれば後から移住してきた人達の方が侵略者であるという設定は、シンプルながら納得できるものでした。

 

マンダロリアンシーズン3に向けて期待の持てる終わり方でした。思っていた以上にグローグーがあっさり帰ってきたのには驚きましたが、誰よりも父親というものに執着していたルークだからこそ、グローグーの父親の元に戻りたい気持ちを汲んだということなのでしょう。また、ディン・ジェリンとグローグーの冒険が観られるのが楽しみです。

 

~追記~

アソーカとルークが話をする場面は確かにエモいのですし、下の動画のように感動しているファンも多いのですが、良く考えるとどうなのかなと。


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下のサイトによればアソーカは年齢的には『フォースの覚醒』の時点でも生きている可能性があります。しかしもし生きていたなら、ベンの指導に悩むルークがなぜ彼女の助言を求めなかったのか、という問題が出てきてしまうと思うのです。そうなるとルークを助けられなかった事情=アソーカは『フォースの覚醒』の前に亡くなってしまう、ということがあるのではないかと考えてしまいます。

hitokoto-mania.com

個人的にはこのフィローニ、ファブローの二人でやっているシリーズは、こういう辻褄合わせみたいなところに労力を割かなくてはいけなくなってしまうので、あんまり劇場版の作品の設定には近づかないで欲しいと思っています。

 

◆まとめ

・キャラ立ちが弱い。

・ビジュアル面では良いところも多かった。

コーダ あいのうた

ビヨンド・ザ・ショア

制作国:アメリカ・フランス・カナダ(2021)

日本公開日:2022年1月21日

上映時間:112分

監督:シアン・ヘダー

脚本:シアン・ヘダー

撮影:パウラ・ウイドブロ

音学:マリウス・デ・ブリーズ

出演:エミリア・ジョーンズ、トロイ・コッツァー 他

あらすじ:海の町でやさしい両親と兄と暮らす高校生のルビー。彼女は家族の中で1人だけ耳が聞こえる。幼い頃から家族の耳となったルビーは家業の漁業も毎日欠かさず手伝っていた。新学期、合唱クラブに入部したルビーの歌の才能に気づいた顧問の先生は、都会の名門音楽大学の受験を強く勧めるが、 ルビーの歌声が聞こえない両親は娘の才能を信じられずにいた。家業の方が大事だと大反対する両親に、ルビーは自分の夢よりも家族の助けを続けることを決意するが……。(映画.comより)


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評価:★★★★★

 

◆感想(ネタバレ)

昨日発表されたアカデミー賞のノミネーションでは作品賞、助演男優賞(トロイ・コッツァー)、脚色賞(シアン・ヘダー)の3部門でノミネートされました。どの部門も受賞の最有力候補というわけにはいかないようですが、非常に評価が高いことは間違いありません。


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映画.comの解説にもありますが、CODAとはChildren of Deaf Adultsの略で「⽿の聴こえない両親に育てられた⼦ども」のことだそうです。今作でルビーの家族を演じている、トロイ・コッツァー(父)、マーリー・マリトン(母)、ダニエル・デユラント(兄)はいずれも本当に聴覚障害のある俳優です。公式サイトによるとこのキャスティングは監督のヘダーの意向のようですが、本作の日本語版Wikipediaによると、母親役のマリトンの意向もあったようですね。

gaga.ne.jp

ja.wikipedia.org

 

今作でアカデミー賞助演男優賞にノミネートされたトロイ・コッツァーは、当ブログのなかで扱った『マンダロリアン』に出演していました。なんの役かというとチャプター5で出てきたタスケン・レイダーの役です。そういえば、マンドーが手話でタスケンと会話する場面がありましたが、あれが彼だったんですね。

starwars.fandom.com

dreamofmoth.hatenablog.com

 

さて、肝心の今作の中身ですが、非常におもしろかったです。なんといっても凄かったのが主演のエミリア・ジョーンズの歌です。歌の才能がある設定の役なので、ものすごくトレーニングをしてから撮影に臨んだとのことですが、すごくいい声でした。エンドロールでかかるBeyond The Shoreも彼女が歌っています。ただ、本当に感心したのはその歌声だけでなく、それを使った演技でした。劇中で先生からダメだしを受ける→改善するという場面があるのですが、ダメな声と改善したあとの声が、極端ではないけど明確に違いがわかるぐらいの絶妙な変化をするのがリアルでした。

 

今作はフランス映画『エール』のリメイクです。『エール』より今作の出来を評価する人の方が多いようですが(だからこそ脚色賞にノミネートされています)、私も今作の方が好みでした。概ねあらすじは同じ話なのですが、『エール』に比べると圧倒的にこちらの方が登場人物に深みがあるように感じられます。特に先生とお母さんの印象は今作の方が格段に良いです。

*以下ネタバレです。

 

 

 

 

 

 

 

◆ネタバレ

ルビーは音楽教師のベルナルドからマイルズとデュオを組んで歌うように指示される。ルビーの自宅でマイルズと練習するが、マイルズが来ていることに気付かなかった両親がセックスを始めてしまい練習は中断。マイルズがそのことを学校で悪気なく他の生徒に話してしまったため、ルビーは学校で笑いものにされてしまう。罪滅ぼしのため、マイルズはルビーのお気に入りの湖で一緒に時間を過ごし、二人は親密さを取り戻していく。

 

漁師の間では仲買人に魚を安く買い叩かれることが問題になっていた。レオは漁業協同組合を立ち上げ、お客に直接魚を売ることを提案する。

 

ルビーがマイルズと出かけている間にルビーのいない状態で船を出したフランクとレオは聾者のみで船を出すのは危険だとして、湾岸警備隊に通報され船の免許を停止されてしまう。免許停止を解除するためには必ず健聴者を船に乗せる必要があると裁判所で告げられ、ルビーは進学を諦めて家業を手伝うことを決意する。

 

学校での発表会が始まる。ルビーとマイルズのデュオに聞き入る人々の様子をみたフランクは娘の才能を確信。翌日家族で音大の受験に向かう。ルビーは手話を交えた『青春の光と影』を披露する。合格の通知を受けたルビーは家族のもとから旅立っていく。

 

◆感想(ネタバレあり)

圧巻だったのはクライマックスでルビーが歌う『青春の光と影』です。曲自体は昔からある、今作のために書かれたわけではない曲ですが、歌詞が物語と絶妙に合っていて本当に見事な選曲でした。

 

『エール』との違いにも少し触れたいと思います。

 

主人公の才能を見出してくれる教師のベルナルドは「発音が変だったことで奇異の目で見られたこと」をトラウマに感じるルビーに向けて、それは君だけじゃないと励ましますが、察するにメキシコ系であるベルナルド自身が英語の発音でからかわれたことがあったということなのでしょう。こういう設定は『エール』には無かったのですが、これがあるだけで全然この先生の見え方が違うので、非常に巧い改変だと思います。

 

また、お母さんのジャッキーは前半はルビーに依存的で人として未熟な印象を与えます。しかし、終盤になって彼女には健聴者だった彼女の母親と分かり合えなかったつらい体験があり、それゆえに娘と分かり合えない不安を抱え続けてきた人物だとわかると、一気に感情移入できるキャラクターに変貌します。実はこの設定も『エール』にはなかったもので、(『エール』だとこのお母さんは本当にただただ幼い人に見えます)細かいことだけど非常に重要な改変だと思います。この母親の告白に対するルビーの返しも秀逸でしたね。

 

そして、今作で個人的には今作で最もルビーを案じているのがお兄ちゃんのレオなのではないかと思います。妹に好きなことをさせてやりたいという責任感もそれがなかなか彼の力ではできない無力感も人一倍感じているのが伝わるキャラクターでした。『エール』では兄でなく弟の設定なので(これはそれはそれで『エール』の中では意味があったと思いますが)、これは今作独自のテイストです。

 

…とここまで絶賛モードで来たのですが、『エール』の方が明確に良かったところもあってそれが今作の数少ない問題点にもつながっている気がします。

 

今作は「健聴者の世界」と「聾の世界」が分断されたものであることをかなり強調して描いています。その間にいるのがルビーであり、主人公一家は彼女なしには健聴者と関われない人達として描かれます。そのせいですごくルビーへの依存度が高く見えるため、どうしても「じゃあ、この家族はルビーが生まれる前はどうやって暮らしてたの?」という疑問が浮かんでしまうつくりにはなっていると思います。その点『エール』では娘がいなくても健聴者と家族が意思疎通を図る場面がちゃんと出てきます。この点ではむしろエールの方が自然であるように思います。

 

ちょっと不満も書きましたが、少なくとも『エール』を観るまではそこも気にならなかったですし、全体的な完成度はかなり高い作品だと思います。

 

◆まとめ

エミリア・ジョーンズの声とその演技が良い。

・登場人物にしっかり奥行きが感じられる

・クライマックスの『青春の光と影』の歌詞が物語とリンクしていて絶妙。

大怪獣のあとしまつ

小説 大怪獣のあとしまつ (講談社KK文庫)

制作国:日本(2022)

日本公開日:2022年2月4日

上映時間:115分

監督:三木聡

脚本:三木聡

撮影:高田陽幸

出演:山田涼介、土屋太鳳 他

あらすじ:人類を恐怖に陥れた巨大怪獣が、ある日突然死んだ。国民が歓喜に沸く一方で、残された死体は徐々に腐敗・膨張が進んでいく。このままでは爆発し、一大事を招いてしまう。そんな状況下で死体処理を任されたのは、軍でも警察でもなく、3年前に姿を消した特務隊員・帯刀アラタだった。(映画.comより)


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評価:★☆☆☆☆

 

◆感想(ネタバレなし)

大怪獣と濁していますが、ビジュアルを観てもらえればわかる通り明らかにゴジラです。実際に造形は平成ゴジラシリーズを手掛けた若狭新一さんが手掛けていらっしゃいます。さらにその大怪獣が地上で倒れたままになっているというのはどうしたって『シン・ゴジラ』のラストを連想させます。東宝の成功に東映と松竹がフリーライドしてきた感じですね(笑)。

 

怪獣映画好きとしては楽しみにしていたのですが、正直不安もかなりありました。その不安の理由が監督・脚本の三木聡です。過去作は『インスタント沼』を観たのですが、正直あんまりおもしろいとは思いませんでした。さらに前作の『音量を上げろタコ!なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!!』は誰も褒めてる人がいないんじゃないかという酷評の嵐の作品だったので、これも不安に拍車をかけた一因です。

 

そして結論から言えば、完全にその不安が的中してしまいました。予告編は硬派なSF映画の印象ですが、中身は三木監督テイストのギャグ映画です…。全然劇場で笑いはおこっていなかったけど。

 

これが三木監督の作風と言ってしまえばそれまでなのですが、もっと正攻法なブラックコメディの方が観たかったと思いました。今作の何が問題かと言えば、セリフが全部ギャグっぽいので、登場人物が真剣に事態を解決しようとしているように見えないというところだと思います。劇中の人物は必死だけど傍から観ているとそれが滑稽、というのがコメディの面白さだと思うのですが、今作はそうではありません。あえて言えば凄く長尺のつっこみ不在の漫才を観ている感じでした。30分ぐらいの尺ならそれでもいいのですが流石に2時間の映画という媒体で、これはちょっと…という感じがします。

 

役者陣は凄く豪華なのにもったいないと思いました。染谷将太菊地凛子の夫妻なんて夫婦揃ってなんという映画に出てしまっているんだろうという感じです(笑)。

*以下ネタバレです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆ネタバレ

八見雲という人物が怪獣のガスを成層圏に排出する方法を特務隊に持ち込むが、リスクもある方法のため実行は見送られる。ユキノの提案で一級河川の真ん中で倒れている怪獣を、上流のダムを決壊させることで海へと押し流すという作戦が実行されるが、怪獣は上流に向けて口を開けて倒れていたため、口から水が入って肛門を通り抜けてしまい作戦は失敗に終わる。八見雲の案に基づいてユキノの兄の青島が設計した排煙装置を使ってアラタは怪獣のガスの排出を始めるが、ユキノの夫の天音はミサイルを撃ち込む。ユキノはアラタを助けようとするが間に合わず、アラタは怪獣から落下する。しかし、アラタはそのまま立ち上がると”デウスエクスマキナ”と唱え、巨大化。怪獣を持ち上げて宇宙へ飛び立っていった。

 

◆まとめ

・SFではなくコメディ映画。ただし、そんなに笑えるわけではない

シャン・チー テン・リングスの伝説

シャン・チー /テン・リングスの伝説 (特典映像付き) (字幕版)

制作国:アメリカ(2021)

日本公開日:2021年9月3日

上映時間:132分

監督:デスティン・ダニエル・クレットン

脚本:デイブ・キャラハム、デスティン・ダニエル・クレットン、アンドリュー・ランハム

撮影:ビル・ポープ

出演:シム・リウ、オークワフィナ 他

あらすじ:犯罪組織を率いる父に幼いころから厳しく鍛えられ、最強の存在に仕立て上げられたシャン・チー。しかし心根の優しい彼は自ら戦うことを禁じ、父の後継者となる運命から逃げ出した。過去と決別し、サンフランシスコで平凡なホテルマンのショーンとして暮らしていたシャン・チーだったが、伝説の腕輪を操って世界を脅かそうとする父の陰謀に巻き込まれたことから、封印していた力を解き放ち、戦いに身を投じる。


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評価:★★★★☆

 

◆感想(ネタバレなし)

今世間で猛威を振るうのはコロナウイルスのオミクロン株ですが、この映画が公開されていた時にはデルタ株が大流行していたため、私は今作を劇場で観るのは断念してしまいました。Disney+で配信されたのでようやく観れたのですが、やっぱり劇場で観たかったなぁと思いました。

 

今作は割とジャンルミックスな映画です。MCU映画でカンフーモチーフなので当たり前ですがベースはアクションです。ただ、後半はかなりがっつりファンタジーになり、怪獣映画要素も出てきます。ネタバレになるのでここではあまり詳しく書けませんが、怪獣映画好きの私としてはこの展開は大満足でした。

 

主人公シャン・チーを演じるのはシム・リウという俳優で、今作までほぼ無名の俳優とのことですが、非常によく動ける俳優ということでケビン・ファイギが抜擢したとのことです。事実、とても美しいアクションでした。

eiga.com

 

シャン・チーの妹シャーリンを演じるのはメンガー・チャンという俳優で、この方もこれまでは無名の方でした。シム・リウと違ってアクションの経験があったわけではないため、トレーニングはめちゃくちゃ大変だったらしいですが、この方も素晴らしい演技をしています。ちなみにシャン・チーの妹という設定でしたが、実年齢はシャン・チーを演じるシム・リウよりこの方の方が上のようですね。

front-row.jp

 

シャン・チーのサイドキック、ケイティを演じるのはオークワフィナ。こちらは売れっ子の俳優さんですね。『ジュマンジ』のときもそうでしたが、コメディパートを担っています。

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*以下ネタバレです

 

 

◆ネタバレ

友人のケイティと共に中国、マカオに向かったシャン・チーはそこで妹のシャーリンと再会する。そこに二人の父、ウェン・ウーも現れ、3人を彼の組織、テン・リングスの基地へと連れて行く。ウェン・ウーは亡くなった妻がター・ローと呼ばれる地に捕らわれていて、助けを求めていると主張する。シャン・チー、ケイティ、シャーリンの3人は、ター・ローから来た生き物モーリスとモーリスと話ができるトレヴァーに導かれ、ター・ローにたどり着く。ター・ローではシャン・チーの伯母、イン・ナンが彼らを迎え入れる。イン・ナンはウェン・ウーが聞いたという妻の声は、ター・ローにあるダークゲートの向こうに閉じ込められている魔物のまやかしだとシャン・チーに伝える。ほどなくしてウェン・ウーが配下を連れてター・ローにやって来る。妻が捕らわれていると信じて疑わないウェン・ウーはダークゲートを開けてしまう。中から魔物が現れ、ター・ローの戦士達とウェン・ウーの配下は共闘して戦う。戦いの中でウェン・ウーは命を落とし、死の間際にシャン・チーにリングを授ける。ター・ローに潜む龍の力を借り、シャン・チーとシャーリンは魔物を倒すことに成功する。アメリカに戻ったシャン・チーとケイティは魔法使いのウォンに呼び出され、リングがどこかに向けて信号を放っていると聞かされる。一方、中国に残ったシャーリンは父に代わってテン・リングスを再組織する。

 

◆感想(ネタバレあり)

ファンタジーが好きな私としてはやっぱりター・ローで次々と出てくる不思議な生き物が良かったです。シネマンドレイクさんのブログによるとあそこに出てくる生き物はみんなきちんと中国の伝説上の生き物のようです。

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なんと言っても私の心を掴んだのは龍ですね(小学校低学年みたいな感想ですが…)。どうしてもこういうファンタジーや怪獣映画に出てくる巨大生物は西洋的な”竜”=ドラゴンがモチーフになっていることが多いのですが、今作はしっかり東洋的な“龍”が出てくるのが嬉しいところです。火なんか吹いたりしないで、水を操るという神秘的な戦い方をするところも好印象でした。作り手側が良くわかっているなと思います。

 

2時間越えの作品なのですが、お話のテンポが非常に良くどんどん展開していってくれるのであまり長くは感じませんでした。一点気になったのはター・ローにやってきた後にシャン・チーがあまりにもすぐに父との戦闘モードになってしまうことでしょうか。魔物の仕業だとわかったんだからいきなり″血で報いる”なんて物騒なこと言わなくても…と思ったり。

 

主要キャラクター3人、シャン・チー、ケイティ、シャーリンはどれも魅力的にキャラが立っていました。オリジンストーリーとしては十分な出来だと思います。

 

◆まとめ

・怪獣映画要素の龍が良い

・お話のテンポが良い

・主要キャラクターが皆立っている。

 

義母と娘のブルース 2022年 謹賀新年スペシャル

【Amazon.co.jp限定】『義母と娘のブルース』2022年 謹賀新年スペシャル(ミニポスター (キービジュアル)付) [DVD]

放送日:2022年1月2日

演出:平川雄一

脚本:森下佳子

出演:綾瀬はるか 竹野内豊 他

あらすじ:2020年の年明け。義母・亜希子(綾瀬はるか)の手腕により再建に向かっていた大阪の企業・ゴルディックが乗っ取りに遭う。新しいオーナーは、外資系ファンドのボス。企業を安値で買収し、株式や資産を高値で売りさばいて大金を得る、いわゆるハゲタカである。しかし、憎き相手に対面したはずの亜希子は、彼の姿に言葉を失ってしまう。リベンジすべきその男・岩城良治(竹野内豊)は、他界した夫・良一(竹野内豊、二役)と顔が瓜二つだったのだ!!そんな衝撃の幕開けをする今作。ハゲタカ良治が買収の標的にするのはまさかのベーカリー麦田。ある新事業が功を奏し、売り上げを順調に伸ばしていたベーカリー麦田だが、日本一のパン屋を目指す店長・麦田章(佐藤健)のノーテンキな野望につけ込み、大手製パン会社との合併を画策していたのである。麦田の営業部長である亜希子は、明らかに裏がありそうな良治の提案にNOを突きつけるのだが、亜希子の心はかすかに揺れ動いていた・・・。果たしてこの買収劇にはどんな展開が待ち受けているのだろうか?ハゲタカへのリベンジか、はたまた恋か?亜希子へ思いを寄せる麦田も巻き込んだ三角関係!?そんな大人たちを、相変わらずの笑顔で見守るみゆき(上白石萌歌)は、誰よりも亜希子の幸せを望んでいた。(公式サイトより)


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評価:★☆☆☆☆

 

◆感想(ネタバレなし)

連ドラでやっていたときは好きだったのですが、今作は期待が大きかった分がっかりしてしまいました。

 

今作はお話的には前作(2020年の新春スペシャル)の直後から開始にもかかわらず、リアルタイムでは2年の月日が経っているというギャップがあり、正直に言うと私は前作の内容を忘れていたので、武田鉄矢がどういう役どころだったか忘れていました。これは私の邪推なのですが、恐らくTBSは2020年中に今作を作りたかったのではないかと思います。2020年の新春スペシャルは岩城と亜希子が対面するところで終わるという、非常に中途半端な幕切れでした。これだけ明らかに続きがあることを示しておきながら、続編が放送されるのが2年後というのは普通は無いと思うので、何らかの理由でスケジュールが遅れてしまったのではないかと思います。

 

あと、元々は連ドラの企画だったのかなとも思いました。スペシャルドラマの続きがまたスペシャルドラマということってあまりない気がします。いずれにしてもスペシャルドラマで一気に描くより、連ドラでじっくり描く方が向いているストーリーだったと思いました。

*以下ネタバレです。

 

 

 

 

 

 

 

 

◆ネタバレ

岩城には真面目に企業再建に取り組みたい気持ちが残っているのではないかと感じた亜希子は、株式を5年は売らないという条件のもとで白百合製パンと麦田の合併を提案する。亜希子が出した条件には、そうすることで岩城が自社から咎められずに地道な企業再建が出来るようになるという意図があった。しかし、岩城は亜希子の提案が自身への不信からくるものであると誤解。ダミーの契約書を亜希子に示し、その間に麦田と株式に関する条件の無い契約を直接結び、ベーカリー麦田の商品の実質的な乗っ取りをしてしまう。亜希子は白百合製パンの従業員たちと結託して大々的な抗議を行い、わざと麦田の株価をさげることで株式の売却を阻止。さらに岩城の元妻で弁護士の中瀬の協力を得て、一連の契約を白紙に戻すことに成功する。みゆきから自身が亡き良一と容姿がそっくりであることを聞かされた岩城は、一連の出来事で宮本家の思い出を傷つけたことを謝罪。罪滅ぼしとして亜希子、みゆきと二人で良一と撮れず終いに終わった家族写真を撮る。

 

◆感想(ネタバレあり)

どうしても最後の展開に納得いきませんでした。いくら顔が似ているからといって全くの別人とああやって写真を撮りたいものでしょうか。ましてや亜希子は岩城が自分の真意を誤解した結果ああいった行動をしたと知らないので、単に自分を騙しただけだと思っているはずです。どう考えても亜希子と岩城の関係性がもう少し修復された後でないとあの展開は厳しいものがあったと思います。

 

エンドロールでは主題歌の『アイノカタチ』とともにドラマのときの映像が映るのですが、正直ここが一番良かったというか…。改めてこの物語はやっぱり亜希子とみゆきのお話であり、そこが良いところだったのだと再認識させられました。亜希子もみゆきもお互いのことを大事に思いあっている理想的な親子ですが、それでもすれ違ってしまうことがあって、その度に自分達の関係を見つめ直して…ということの尊さが『義母と娘のブルース』という作品の肝なんだと思います。残念ながら今回の話は亜希子と岩城の関係性に焦点が向けられていて、亜希子とみゆきの関係性の変化や発展はまったくありません。いろいろなことを経験してもう親子としては成熟しきってしまったということなのかもしれません。

 

また、その亜希子と岩城の関係性もお互いを思い合う二人のすれ違いというより、岩城が亜希子の味方になるのか否かというところをお話の推進力にしているのでここも少し弱い気がします。本来だったらクライマックスで起こる亜希子を騙してしまう展開はもっと物語の早い段階で起こらないといけなかったのではないかと思います。その上で亜希子と岩城の関係性の修復というところに焦点が当たっていたら、もっと最後の写真撮影のくだりは納得いくものになっていたのではないかと思いました。

 

細かいところではせっかく店長が“なぜキムタ屋を目指しているのか”ということを考えだしたのに、それが割と軽めに流されてしまったのも個人的には不満ポイントでした。

 

◆まとめ

・最後の展開に不満

・今作の肝である亜希子とみゆきの関係性があまり描かれない

仮面ライダー電王 プリティ電王とうじょう!

仮面ライダー電王 プリティ電王とうじょう!

制作国:日本(2020)

劇場公開日:2020年8月14日

上映時間:22分

監督:中澤祥次郎

脚本:米村正二

監修:小林靖子

撮影:上赤寿一

出演:高尾日歌 佐々木告 他

あらすじ:母親とケンカをして家を飛び出した10歳の少女アンナは、なぜかショッカーたちに追われることになってしまい、時を超える列車「デンライナー」に飛び乗る。平成元年の世界に降り立ったアンナは、そこでモモタロスたちとともに冒険を繰り広げる。(映画.comより)


www.youtube.com

 

評価:★★★☆☆

 

◆感想(ネタバレなし)

上映されていたときから気になってはいたのですが、この一本(22分)観るために併映の作品をいくつも観るのはなぁ~、という感じで結局映画館でやっていたときはスキップしてしまいました。ありがたいことに現在Netflixで配信が始まっています。Netflixのタグが「ガールズパワー満載」なのがちょっと可笑しいですが…。

 

感想としては可もなく不可もなくというか、東映まんがまつりの内の1本ならだいたいこんな感じだろうな、という範疇です。モモタロスのキャラクターはこういう軽くて短い作品との相性がいいなと改めて感じました。これなら同じフォーマットでいくらでも電王の新作が作れるんじゃないかという気がします。

 

秋山莉奈演じるナオミも登場し、久しぶりにデンライナーの常駐メンバーが揃うのもファンとしては嬉しいところでした。ただ、本当に何の説明もなくデンライナーとイマジン達とナオミが出てくるので、仮面ライダー電王を知らない今の子供たちはこれを観てどう思うのかはちょっと気になりました。いったい誰向けの映画なんだろうという疑問は正直残ります(笑)。

moviewalker.jp

 

作り手に目を向けると、脚本は米村正二ですが、監修にテレビシリーズのメインライターだった小林靖子の名前が入っているのが嬉しいところです。やはり人気コンテンツの電王なので、東映としても可能な限り丁寧に作りたいという思いがあるのではないでしょうか。モモタロススーツアクターはこちらもテレビシリーズと同じく高岩成二が務めています。プリティ電王のスーツアクターは坂梨由芽さんという方がやっていらっしゃるようです。予告編でモモタロスは“ちっちぇな”と言っていますが、坂梨さんのプロフィールを読むと身長は157cmとのことなので、別に女性として極端に小柄な方ではないようです。

japanactionenterprise.com

 

映像としてはアンナがショッカー戦闘員から逃げて集合住宅のゴミ集積所に隠れたらそこがもうデンライナーの中、というのが予算はかかっていないけど画的におもしろくて良かったと思いました。

*以下ネタバレです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆ネタバレ

平成元年の世界で、アンナは同い年の少女に出会う。メロンパンが大好きなその少女は自分のことをメロンと呼ぶようにアンナに言う。ショッカー戦闘員とイカデビルが現れ、メロンが大切にしていた宝くじを奪う。アンナはメロンを助けるため、モモタロスの力を借りてプリティ電王に変身して戦う。ショッカー戦闘員を倒したもののイカデビルとの戦いでは変身を解除されてしまう。なおも立ち上がって変身して戦おうとするアンナの姿に良太郎を重ねたモモタロスは一人で電王に変身し、イカデビルを倒すが、必殺技を放った際にイカデビルが持っていた宝くじも真っ二つにしてしまう。アンナはセロハンテープでそれを貼り合わせメロンに渡し、メロンはそれを自分の宝ものにするとアンナに伝える。現在に戻ってきたアンナは、母親が渡してくれていたお守りの中にその宝くじが入っていることに気付き、メロンが子供のころの母親だったことに気付く。

 

◆まとめ

東映まんがまつりの内の1本としては概ね満足できる作品